旅の始まり-11
<PM1815 またまたまたまた自宅アパート>
朝と同様、ケータイの着信音に、目が覚めた。
時計を見たら、6時過ぎ。
やべっ!!
シホは、週末決済をする金曜以外は、おおかた6時半には帰ってくる。
慌ててコトリを起こして、慌ただしくお着替え。
コトリは、寝ぼけて、まだ夢遊病者。
はいっ、お顔を拭いて……。
クレンジングフォームで、顔をゴシゴシ。
「痛いぃっ!」
目が覚めたろ。
10分もしたら、表に軽のエンジン音。
駐車場に入ってきやがった。
早いって!!
シャドウは取れたが、まだうっすらとルージュの跡が残っている。
思わずキスをして、舐めてみたが取れるわけもない。
コトリは、急にキスされて、うっとり……。
なに、ほうけてんだボケッ!
まだ、ハーレム計画は途中。こんなところで頓挫させるわけにはいかない。
いったん部屋に帰るかと思ったが、シホは、いきなりオレの部屋にやってきた。
軽のドアが閉まったと思ったら、すぐさまオレの部屋の玄関がノックされる。
なんでお前らは、すぐにオレの部屋にやってくる!!
間に合わない!
あとは、コトリがうまく誤魔化してくれるか、シホがボケ倒してくれるのを祈るのみ。
武運長久を祈る!
気持ちは、特攻隊を送り出す司令官。
「家に帰ったら、急いで風呂に入れ。」
ドアを開ける前に、取りあえずコトリにミッションを与えておいた。
それくらいのこと、できるでしょ?
ドアを開けたら、たちまち甘い匂いが流れ込んでくる。
「ただいま♪」
いつものあどけない顔が目の前に。
やっぱり可愛い〜♪
「お帰り〜♪」
コトリがいなきゃ、そのまま押し倒すところだった。
「あら?コトリもいたの?」
シホが、コトリに気づいて不思議そうな顔。
でも、すぐに顔をほころばせていく。
「いっぱい、タカ君に遊んでもらった?」
「うん!」
「そう、良かったわね……。」
ラッキー。シホは、どうやら口紅のあとに気づいてないらしい。
「ねぇ、ママ……」
「なあに?」
「一緒に、お風呂に入ろう。」
……………………………。
お前、強引すぎるぞ……。
確かに、急げ、とは言ったけどさ……。
「一緒にご飯食べない?」
シホが、嬉しそうに持ち上げたのは、食材の詰まったビニール袋。
どうやら、オレのために買ってきてくれたらしい。
「う、うん……後から行くよ。」
さっきの着信で、ディスプレイに表示されたのは「重丸伊左久」の文字。
シゲさんの本名。
シゲさんの電話なら、そんなに放っておくこともできない。
シホとコトリが、玄関を出て行くと、すかさず、オレはリダイヤルのボタンを押していた。
短い呼び出し音のあとに、シゲさんが出た。
「もしもし……。」
「よう、お前、今日休んだんだって?」
「はあ、例の件もありましたから……。」
「そっか、早速始めてくれてるのか……。」
「ええ、まあ……ところで、なんの用事ですか?」
「ちょっと、また事情が変わってな、早急にお前に話しておきたいことがある。」
「話し?シホさんとコトリちゃんのことですか?」
「そうだ。…………お前、今どこにいる?」
「自分のアパートにいますが?」
「そっか、なら今から、そっちに行く……。プッ」
あっ!
場所、わかります?
まあ、相変わらず忙しい人だこと……。