孤独な王様-4
「タカが、来ると思ってたから、自動ロック外しておいたんだよ。」
オートロックの謎。
「ほら、せっかく来てくれるのに鍵掛けてたら、悪いじゃない。」
聞いていい?
お前、友達何人いる?
温かい気遣いありがとう♪
おかげで、こっちはゾッとする目に遭わせてもらったよ!!
コレクションルームの中。
アイツは、オレのためにコーヒーを淹れている。
14畳ぶち抜きのでかい部屋。
3LDKの豪華なマンション。
他にも部屋は、たくさんある。
けれど、ヤツは電化製品をたくさん持ち込んで、1日の大半をこの部屋で過ごす。
壁には、きれいに並べられたヤツの愛妾たち。
彼女たちの視線に見守られながら、ヤツは、思い思いの時間に耽るのだ。
乾いた瞳が、オレを見つめていた。
美しい顔から放たれる冷たい眼差し。
怖ぇよ……。
「でも、いきなり部屋に入ってくるなんて、思ってもなかったよ。」
アイツが、コーヒーを手渡しながら言った。
お前、ちゃんと手、洗ったろうな?
なに、オレが悪いわけ?
ってか、オレがやってくるとわかっているのに、なぜ女を連れ込む!?
「タカに電話してるときに、ちょうど、やってきたんだよ。ケータイ取られて、いきなり切られちゃった。なんか、これからまたクラブに行くんだって。すぐにお金が欲しかったみたい。」
「クラブ!?あの子まだ中学生だろ!?いったい今、幾つなんだ!?」
「13だよ」
アイツは、当たり前みたいにあっさり。
「13って、お前……」
つい、この間まで小学生じゃねえか……。
「別に驚く事じゃないよ。アイツは、5年生くらいから、繁華街うろついていたから……。」
「ご,5年生?……。」
「ああ、元々身体が大きかったからね。化粧すれば、うまく誤魔化せたみたい。」
ずいぶんおませな妹さんですこと……。
「親御さん、心配してないのか?」
「うちの親?」
アイツは、短いため息を吐いた。
「心配してるんじゃない?特に親父はね……。」
そう言って、遠くを見るように、窓の外に目を向けた。
黙り込んでしまって、それ以上ヤツは口を開こうとしなかった。
男親なら、娘は特に心配だろうな……。
可哀想に……。
「ところでお前、オレを呼び出した用事はなに?」
「えっ?用事?」
口を開けて、ポカンとした顔。
てめぇ、マジでぶっ飛ばすぞ……。
「ああ!そうだ、タカに見せたいモノがあったんだ。」
「見せたいモノ?」
「うん。」
PCの置いてある机の引き出しを開けて、アイツは何かゴソゴソ。
「ねぇ、タカ……。」
「ん?」
「サカイさん……覚えてる?」
不意にヤツの口から懐かしい名前を聞かされて、胸がつまった。
サカイキョウコ。
オレが、高校時代にずっと憧れていた、女の子の先輩。
こいつも同じ高校に通っていた。
だから、彼女の名前を知っている。
「あ、ああ……。彼女が、どうかしたのか?」
「あれ?どこにいったかな?……最近、彼女に会った?」
アイツは、違う引き出しを開けて、またゴソゴソ。
「いや……。」
風の噂で、彼女はどこかに引っ越したと聞いていた。
最後に会ったとき、彼女のお腹は大きかった。
きっと、どこかで幸せな家庭を築いているのに違いない……。
「ボク、彼女に会ったよ。」
えっ?
「どこで?」
懐かしい顔が鮮やかに脳裏によみがえる。
甘酸っぱい想いが、胸に広がっていく。
「あ、あった。」
「いったい、どこで会ったんだよ!?」
焦るように訊ねていた。
あいつは、オレに振り返って、あっさりと言った
「この中で。」
手に、一枚のDVDを持っていた。