ふたりの過去-12
「今日は、いいや……。」
「ご飯、食べないの?」
コトリちゃんが不満そうな顔。
シホが、迎えに来ていた。
練習のある日は、いつもシホの料理をご馳走になっていたオレ。
食欲が、まったくなかった。
「具合でも、悪いの?」
シホが、心配そうに見つめる。
悪くしてんのは、お前だよ……。
言ってやりたかった。
「じゃあね、コトリちゃん……。」
「うん。」
コトリちゃんが、玄関を出て行く。
シホとふたりで、後ろ姿を見送っていた。
不意に重ねられた唇。
「じゃあ……お休みなさい……。」
寂しそうな目だけを残して、シホもオレの部屋を出て行った。
雪……、4年前……。
頭の中で何かが形になろうとするが、はっきりとした映像になって浮かび上がってこない。
しかし、何かが、引っかかる……。
その時、棚の上にあったケータイが、点滅しているのに気がついた。
開くと、あのニート君から着信が入っていた。
時間は、1時間前だ。
コトリと、一緒に風呂に入っていたときだ。
メッセージは、残されてない。
リダイヤルを押した。
すぐに、アイツが電話に出た。
「もしもし……」
「タカ!やばいよっ!。オレ、見つけちゃったんだ……。ヤバイよっ!、すぐに来て!お願いだから、すぐに来て!プッ」
「おいっ!」
電話は、一方的に切られた。
何があったんだ?
それからは、何度リダイヤルしたところで、アイツは電話に出なかった。
取りあえず、行ってみよう……。
慌てて、着替えた。
そして、俺は思い出した。
マズい……。
マズ過ぎる!
取りあえず、布団干してから行くわ……。
今夜、どこに寝よ……。