日焼けのあとに-2
キャンプって楽しいけれど、後始末はけっこう大変。
やっぱゴミ埋めてっていい?
「ダメだよ!そんなコトしちゃ!」
コトリちゃんに怒られた。
すいません……。
「海の家の向こうに、ゴミ捨て場ありましたよ。」
シホさん、早く言ってよぉ……。
穴まで掘ったじゃない。
「分別するの、大変そうだったけど♪」
手伝うつもりは……なさそうね……。
ふたりとも、朝からずっと甲羅干し。
ビキニライン、消すんだって。
ちったぁ手伝え……。
今朝は、フライングボディアタックから始まった。
「どうして、起こしてくれなかったのぉぉぉっ!!!」
コトリちゃんは、寝ているオレに馬乗りになりながら、襟首つかんでグラングラン。
ええ?……なんですかぁ?……。
寝不足で、こっちは、ほぼ死人。
どうやってテントに帰ってきたかも、よく覚えてない。
「あんまり気持ちよさそうに寝てたから、可哀想だったのよ……。」
模糊とした意識の中に聞こえた優しい声。
不意に脳裏によみがえる夕べの出来事。
途端に目が覚めた。
慌てて目を向けると、そこにあったのは……。
いつもの、あどけなくて可愛いらしい顔。
「おはよう♪」
無邪気な笑顔が向けられる。
「お、おはよう……。」
コトリちゃん、オレ、顔ひきつってない?……。
シホさんが取りなしてくれたけど、やっぱりコトリちゃんは治まりきらない様子。
「罰!タカが全部ひとりで片付けて。」
今日は、キャンプの最終日。
お昼には、この海岸を離れる予定。
朝から、やることは、いくらでもある。
テントの撤収。
荷物の積み込み。
ゴミの後始末等々……。
それを全部オレひとりで、やれってかい?
勝手に寝てた、お前が悪いんだろ……。
「じゃあ、せっかくだから、タカ君が、お片付けしてくれてる間、わたしたちは甲羅干しでもしましょうか?」
なにが、「せっかく」なの?
あなたも、同罪なんですけど……。
「そだね。じゃあ、着替えるから、さっさと出てって。」
コトリちゃん、いかにも勝ち誇った顔。
お前、帰ったら必ず泣かしてやるからな……。
「コトリ、意地悪言っちゃダメよ……タカ君、居ていいわよ……。」
妙に含んだような声音だった。
シホさんが、着ていたパーカーのジッパーをゆっくりと、下ろしていく。
「見たいでしょ?……。」
向けられた眼差しに、思わず息を呑む。
夕べと同じ顔。
妙に冷めた、それでいて密かに獲物を狙いつづける、執念深さを匂わせる、あの目つき。
伏せた長い睫毛の下から、覗くようにシホは、オレを見つめていた。
いい……遠慮しときます……。
右手と右足が同時に出たね。
テントを出たら、中から大爆笑。
「ママ、からかっちゃダメだよ!」
「だって面白いんだもん♪」
・・・・・・・・・
お前ら、いつか必ずまとめて泣かしてやるからな……。