〈被虐少女〉-1
『……なんだよ、酷え面してんなあ?』
鉄パイプで出来た拘束台の上に座らせられたままの愛は、首謀者達の想像以上に泣き叫んでいたようで、目は真っ赤に泣き腫れ、拭えない鼻水は糸を引いて顎から垂れ、そして汗と涙で顔面はグチャグチャになっていた。
しかし、もっと凄いのはその形相である。
つり上がった眉と目には憤怒の炎が揺らぎ、剥かれた八重歯はまるで牙のように見える。
それは首謀者達が少し怯んでしまうほどの、まさに殺意を放っていた。
『フへへッ…なにをそんなに怒ってんだあ?短いスカート穿いたりブルマー着たりよぉ……俺達にオナニーのズリネタを提供してきた亜季ちゃんじゃねえか?ヒヒヒヒ……ほら、亜季ちゃんが美味そうにフェラチオしてビンビンにしてくれた俺のズル剥けチンポ、お姉ちゃんも『欲しい』んだろう?』
「ッ!!!」
更なる挑発に、愛の目は更に吊り上がった。
「ば、バカにするのもいい加減にしてよ!!殺してやるから鎖を解けよッ!!解けよ早くぅッ!!」
怒髪天を衝いている愛は、凡そ少女とは思えぬ怒声を口にし、声を限りに罵った。
亜季を笑いながら姦し、哀しみ苦しんだ自分の姿を嘲笑い、そして今度は自分達姉妹の仕事までも愚弄したのだ。
監禁してから今に至るまでのオヤジ達の振舞いは、如何なる弁明の余地もない悪逆な犯罪であり、ましてや実の妹を強姦された姉の怒りは、間違いなくオヤジ達を殺しても足りないほどの激情であろう。
『お〜怖い怖い。でもよ、俺はそんな愛ちゃんが大好きなんだぜ?その柔らかそうなムッチムチな身体つきが堪らねえんだよなあ……ヒッヒヒヒ!』
「きッ!?…キモいコト言わないでよバカッ!!クソオヤジッ!!生ゴミの変態!!」
思い付く罵詈雑言を並べ立て、愛は首謀者を罵倒する。
こんなもので怒りが収まるはずもないのだが、今の愛には“これ”しかなかった。
「んあ…ぐッ!」
首謀者は愛の前髪をむんずと掴むと、その激情に駈られて歪む泣き顔の直前に、ニヤケ顔を近付けた。
『いつまでこの怒った顔のままでいられるかな?……へへッ…どんなアへ顔になるか、ワクワクしてくるぜ……』
変態オヤジの崩れた笑顔を眼前にしても、愛は一歩も引く素振りを見せない……この汚れきった瞳を眼光で射抜き、醜い欲望を粉砕した上で焼き付くしてやろうという憤怒が、その青白く燃え上がる瞳に宿っている…… それは、あの時の麻紗美が見せたのと同じ、悲壮な気迫であった……。