密かな願い-4
結局、2回も出しちゃった。
大丈夫?
シホは、オレの胸に頬を乗せながら、気持ちよさそうに目を閉じていた。
そっと頭を撫でてやると、何かを思い出したようにベッドを降りて、部屋を出て行く。
戻ってくると、手にはウェットティッシュの箱を持っていた。
ベッドの端に膝をつき、オレの指を、一本一本丁寧に拭ってくれる。
ああ、ばっちいもんね。
全部を拭き終えて、シホは、またオレの上に乗ってきた。
甘えるように、胸に頬をすり寄せて、眠たげに目を閉じていく。
「中に出しちゃったけど、大丈夫なの?」
念のため、訊いてみた。
「大丈夫じゃない。」
怒ったような声。
いいって言ったじゃん!。
でも、いいや。オレも26だし、館長も、そろそろ身を固めろってうるさいし。
それに、コトリちゃんも手に入るしね。
シホは、それっきり黙り込んだまま。
何も言ってはこなかった。
なんだか、気まずい雰囲気。
「あのさ、質問があるんだけど……。」
「なに?」
また、怒ったような声。
「その……なんて言うか。どうして、オレと、こういう事に……?」
最大の疑問。
確かにシホとは、ここに越してきてから、顔を合わせる機会は多くなった。
だが、身体を許してもらえるほど、親密になったわけじゃない。
せいぜい挨拶程度。
こんな急激な展開、誰が読めるか!?
シホは、しばらく黙っていた。
「うらやましかったから……」
答えをあきらめた頃に、寂しそうに、ぽつりとつぶやいた。
「なにが?」
「いつも、コトリと仲良くしてて、すごくうらやましかったから……。」
???よくわからん。
「いつも、コトリだけズルイって思ってたの……。」
???さびしかったわけ?
「あのね!」
うわっ!びっくりした。急に顔近づけないで。
「お願いがあるの!」
ひどく切羽詰まったような表情だった。
鬼気迫るものがある。
お金ならないよ。引っ越しでだいぶ使っちゃったから。
「なに?」
「言ったら、聞いてくれる?」
ただならぬ気配に、不安が胸をよぎる。
もしかしてタチの悪いのに引っかかった?
「ずっと、して欲しいって思ってたの……」
だから、何さ!?
シホは、また静かにオレの胸に頬を乗せていく。
細い指が、何かをねだるように胸の上で円を描いた。
「あのね……。」
しばらくの沈黙。
いったい何を言い出すつもりやら。
無邪気な瞳が、オレを見つめた。
「抱っこして♪」
…………………………
お前もかよ…………。