悪魔のような女-1
第6話 〜〜「悪魔のような女」〜〜
「まだよ……。」
泣きたいほどのあどけなさ。
じっと悩ましげな視線に見つめられ、息をすることさえも忘れた。
まるで無垢な童女を思わせる無邪気な笑顔。
瞳の奥には、男を喰い殺そうと企むがごとき妖しげな光。
童女と娼婦が同じ肉体を共有したとき、そのすさまじいエロティズムにかなう男は、存在しない。
「まだ……だめ……。」
まるで愉しむように、女は笑った。
これほど焦がれているのに、まだ許してはくれない。
涙腺がゆるみ、視界がかすむ。
伸ばした腕が、瘧(おこり)にかかったごとく震える。
なぜ、与えてはくれない?。
与えないのなら、なぜ見せた!?
泣いている自分が、不思議だった。
ひれ伏してもかまわない……。
心の底から、そう思えた……。
「生は……だめ……。」
むろん、そんなつもりなど、毛頭ない。
ただ、欲しいだけ……。
心の底から、欲しがっているだけ。
女が、再び笑う。
オレの腹の中を見透かすように……。
無邪気な笑みに、殺意さえ覚える。
オレを、これほどまでに狂わせる悪魔のような女……。
女は、名を「シホ」と言った……。