悪魔のような女-3
「ほんとに、いつもすみません。いつか、お礼しなきゃって、ずっと思ってて……」
で、今夜なわけ?
もう、10時半ですけど……。
「早く、食べよう。」
コトリちゃんが急かす。
確かに。ってか、もう子供は寝る時間……。
「じゃあ、取りあえず乾杯しましょうか?」
なんかシホさん、微妙にテンション高い。
「では、これからも、ヨロシクお願いします。かんぱーい!」
って、グラスを空けてから気がついた。
「あの……。」
「?」
シホさんのつぶらな瞳が、オレに向けられる。
ハッとするほど、可愛らしい顔。
「あの、フツーに飲んでますけど……。」
「?」
「コトリちゃん……。」
コトリちゃんに目を向けて、シホさんも、やっと気がついた。
「あーーーーっ!!!」
すでに、コトリちゃんの顔真っ赤。
オレも気付かなかったわ。
だって、グラスがフツーに並べてあるんだもん!
やっぱりグラス一杯でも子供には効く。
コトリちゃんは、10分もしないうちに酩酊状態。
立てないくらいフラフラ。
「タカと、……一緒にいるうぅ……。」
ほぼ寝言。
仕方なしにベッドへと運んだ。
大丈夫かな?
取りあえず、寝かせて様子を見ることに。
「タカ……タカ……。」
赤い顔で、ずっと呻ってる。
可愛いヤツ。
「大丈夫かしら?」
「たぶん……」
オレも、子供の酔っぱらいには、お目にかかったことはない。
「タカ……。」
苦しげに眉をしかめるコトリちゃんの手を握ってあげた。
「ここに居るよ。」
凶暴さと、可愛らしさを両立させた女の子。
ずっとずっと傍にいてあげたいよ。
想いが、コトリちゃんに届いたらしかった。
「……タカ……チューして……」
口から心臓が出たね。
後ろには、シホさんの姿。
怖くて、振り返ることも出来なかったわ。
「ほんとに……、あなたのこと好きなのね。」
予想外だった優しい声。
シホさんも、コトリちゃんがオレを気に入ってるのは、知っている。
苦笑いしかできないオレ。
まだ、ギリギリセーフか?
いつ、またこの爆弾から、危険なセリフが飛び出すとも限らない。
さっさとフケよ。
そう、思ったときだった
「やっぱり、親子って、似るのね……。」
あらぬ方向で、意外な爆弾が炸裂して、まったく身動きの出来なくなったオレだった……。