リアル・コトリ-3
「この人形って、幾つぐらいの設定なんだろうな?」
オレの視線の先には、一番あどけない顔をしたリアルドール。
十数体あるうちの、ひとつ。
同じ顔をしたのが、他にも3体ばっかあったけど……。
「10才くらいじゃない?」
10才って……アイツの一っコ上かよ。
「コレ、できんのか?」
「ヤれるよ。オナホールあるから。」
あっさり。
まあ、そのための人形だもんな。
「お前らみたいな人種には救世主だな。実際には、出来るはずないからな。」
ヤツの目がキラリと光るのを、オレは見逃さなかった。
「そんなことないんじゃない?」
「なにが?」
「出来ないってこと。」
「本物とか?」
「ああ、実際、出来るみたいだよ。」
「なんで、わかる?」
「見たことあるから。」
「ナマでか!?」
「いや、DVDとかで」
ふーん……。
「信じらんね……」
巧みな誘導。
疑惑の目を向けてたら、アイツは、しばし考えるような顔をしてから、
「見せてあげよっか?」
わーい、ひっかかった♪
こういった奴らの共通点。
自慢のコレクションを見せたがること。
どんなに密かな趣味だろうが、収集したものは、いずれ誰かに見せたくなる。
自分だけしか持っていないもの。
苦労して手に入れたもの。
それを自慢したくて仕方がない。
マニアの性。
スチール棚にフツーに並べてあった。
100枚以上。
「HDにも入ってるよ。」
PCの横にはHDが5,6台。
横に500とか、書いてあるけど、コレ全部か!?
うわっ、テラバイトまで、ありやがる……。
最初の一枚をセット。
ヤツのモニターは、46インチ。
実家のテレビより、でけっ。
いきなり最初から仰け反った。
画面に映し出されたのは、なんと!……赤ちゃん……。
いい……違うのにして……お願いだから……。
「えっ?いいの?すごいのに……。」
すごいのは、お前だ!!!
どれだけ守備範囲が広いんだ!!
人類の敵になるつもりか!?
次に映し出されたのが、上のヤツ。
身長は、コトリちゃんより、ちょっと高め。
でも、身体のつくりなんかは、ほとんど同じ。
金髪で白い肌の外人さんだった。
とても可愛らしい顔。
長い髪を、コトリちゃんのように頭の横で束ねてた。
おかげで、ずっとコトリちゃんと顔が重なって、たいして興奮もできなかった。
まるでモノ扱い。
欲望を処理するためだけの道具。
オレがしようとしてることって、コレと同じこと?
いいや、違う。
オレは、コトリちゃんを悦ばせたいんだ。
あの可愛い声で、気持ちいい、って言わせて、しがみつかせたいんだ。
コトリちゃんが悦ばないなら、どんなに気持ちよくったって、そんなことに価値はない。
マジで、そう思ってんだけど……。
「やめる?……。」
よっぽど、ひどい顔をしてたんだろう。
アイツが気遣って訊ねてくれたけど、オレは首を横に振った。
だって、こんなスゴイの滅多に見れないじゃん!
「何枚かコピーしてくれよ。」
断られるのを承知で、図々しく言ってみたら、以外にもあっさりOK。
コンビニのビニール袋に、焼いたDVDが10枚ほど。
「今度、来たとき金払ってやるよ。」
白い歯を見せて、にこやかに言ったら、アイツは嬉しそうに笑っていた。
「また、来てよ。」
新婚の奥様ばりに、引きこもりのアイツが、玄関まで出てきて見送ってくれる。
エレベーターのドアが閉まるまで、ずっとアイツは、玄関で手を振っていた。
ほんとに、友達いねえんだな、コイツ……。