ポッキー-2
なわけないか……。
「どうして、こんなにメンドくさいわけ?うちのは、もっと簡単だよ!。」
窮屈なシートに固定されて、コトリちゃんは、ブーたれ顔。
だって、危ないでしょ?
オレの愛車は、GT−R。
改造費は、エンジン、足回りを含めて、およそ200万
一時期、狂ったようにハマって、給料のほとんどを突っ込んでいた。
助手席も、5点式バケットシート。
「うわぁ!すごぉい!」
一度でいいから、女の子に言われたかった。
「なにこれ?あたし、パス!」
現実は、こんなもん……。
コトリちゃんも、同じ。
「お尻が痛いぃッ!」
そりゃま、バケットシートだからね。
身体に合わないと、痛いわな。
「普通のがいいッ!」
はい……。
実家から持ってきて、すぐに付け替えます……。
道場からの帰り道。
コトリちゃんは、ものすごく不機嫌な顔で、話しかけんなオーラを全身から発散しまくってる。
窓の外に目を向けたままで、振り向いてもくれない。
じい様、余計なことを言ってくれる。
よりによって、コトリちゃんの前で……。
それも、お母さんと結婚だなんて……。
なんて、ナイスなアイデアなんでしょ♪
お母さんとは、たった三つ違い。
それも年上。
顔は、まったくのコトリちゃん似。
やっぱり、コトリちゃんに似て、小柄な人。
でも、意外とトランジスタグラマー。
ど真ん中ストライク!
ストライクゾーンがメチャクチャ広いオレ。
コトリちゃんに、興奮。
お母さんで、発射!。
憧れの肉布団。
あのお母さんのお腹の上で、コトリちゃんの初モノを……。
いててててっ!。
んなこと考えてたら、クロッチストラップ(股んところ)が、玉に食い込んだ。
狭い車内でひとりコント。
「ママは、ダメだからね。」
いきなり、きたッ。
コトリちゃんは、窓の外に目を向けたまま。
ほんとに、びっくり。
なんですか?
君は、サイコメトラーですか?
どこにも触ってないよね?
怖いんですけど……。
「ママ……、好きな人がいるもん……。」
窓の外に目を向けたまま、独り言のように、コトリちゃんがつぶやく。
「誰?」
思わず、聞き返していた。
「パパ……。」
ひどくさみしそうな声。
そう言えば、コトリちゃんのお父さんって、知らないよなぁ……。
「どんな人だったの?」
やっぱり、興味は湧く。
あの可愛らしいお母様の中で暴れまくって、こんな愛らしい天使を創った○玉の持ち主。
「知らない。ずっと、いなかったもん……。」
「生まれたときから?」
「うん……。」
お父さんの記憶ないんだ……。
「どうしてお母さんが、まだパパのこと好きだって、わかるの?。」
当たり前の疑問だった。
「ママが、前に言ってたもん。」
「なんて?」
「絶対、アイツのことは忘れないって。」
アイツ?
お母さんが、そう言ったの?
なんか、おかしくネ?……。
「コトリがママのお腹にいるときにね、パパは『ウワキ』したんだって。だから、絶対忘れないんだって……。」
…………………………
――お母さん。コトリちゃんにどんな言い方したんですか?……。
で?。
「去年、海に行ったとき、ママが言ってたよ……。『ウワキ』は大事なものだから、絶対離しちゃダメよって……。」
ああ!なるほど!そういうことね!
って……。
いい……突っ込まない。てか、ツッコミたなくない……。
コイツ勘違いしてやがる。
ウワキは、大事なもの。
おそらくコトリちゃんの頭の中には、その部分だけしかインプットされてない。
大事なもの + 忘れない = 好き。
こういう図式が、コトリちゃんの中で成り立ってるわけだ。
アホか……。
『ウワキ』じゃなくて、『ウキワ』だろ……。
お母さん……ちゃんと教えてあげないと、この子、間違ったまま生きていきますよぉ……。
おマセさんだけど、やっぱり幼い女の子
つくづく子供なんだなぁって、感じた。
はい!お父さん消えたああああっ!!
なんか、嬉し♪
「コトリちゃんのおウチにね、他にお母さんに会いに来る男の人とか、いるの?」
念のため、訊いてみた。
「いるよ。」
げっ!
いるのかよ!
「新聞屋のおじさんに、大家さんのおじいちゃん。」
ああ、オレも、そのじいちゃんなら会ったよ……って、違うわ……。
まあ、コトリちゃんなら、そう答えるのが普通だよな……。
やっぱ、自分で確かめるしか、なさそ。