爆弾娘-3
「おい、ヨメが呼んでるぞ。」
休憩時間。
他の指導員から声がかかる。
指差す先には、コトリちゃん。
すっかりヨメになってるよ……。
手招きしてる。
別にコトリちゃんが、これ見よがしに言いふらしてるわけじゃない。
ずっとベッタリくっついて離れないから、みんながそう言って揶揄してるだけ。
最近じゃ、女の子に悪さする不埒な奴らが、世間を騒がしたりするから、ご父兄の方々もそのあたりの目は厳しい。
これだけベッタリくっついてると、変な風評も立ちそうだが、取りあえずオレはここでは好青年。
見合い写真持ってきてくれた、お母さんもいたっけ。
「抱っこ……。」
出たよ、十八番。
お馴染みの光景。
毎度過ぎて、誰も気にも止めやしない。
「ねぇ、下に行こぅ……。」
さっきまでの勇ましさはどこへやら。
コトリちゃんは、すっかり甘えた声で、おねだり。
この歳で、女の顔を使い分けるなんて末恐ろしい子だよ。
階段の踊り場に出たところで、すぐにギュッてしがみついてきた。
もう、甘えまくり。
「誰かいるぅ?」
「誰もいないよ。」
すぐさま小さな唇が押しつけられる。
待て!待て!ここは危ないって!
下からは、子供達の練習が終わるのを待っているお母さん達の笑い声。
トイレも下だから、いつ誰が道場から降りてくるかもわからない。
しっかり首にしがみついてて、離れやしない。
無理に引っ剥がしたら、不満そうな顔。
「コトリのこと好きじゃないの!?あんなにいっぱいエッチなコトさせてあげてるのに!」
頼むから、危ない会話はやめて……お願いだから……。
ほんとに困った子。
「嫌いなわけないでしょ。」
尖らせた唇に、チュッてキスしてあげたら、すぐに機嫌が直った。
嬉しそうな顔して、胸に頬を寄せてくる。
取りあえず、一安心。
「おうちに帰ったら、いっぱいキスしてあげるから、今は、我慢するんだよ。」
小さなお尻をナデナデ。
コトリちゃん、くすくす笑いながら「キスだけじゃないくせにぃ。」と、また危ない発言。
もう……ほんとにやっちまうぞ!!
ヤるよりも早く、オレの心臓がやられてしまいそうだ。
頼むから、大人しくしててね……。
結局、後段の練習も、オレにベッタリ。
「足、上がらなぁい……。」
上段蹴りの練習。
嘘つけ!さっきまで真上に上がってただろ!
股関節を柔らかくするために、補助をつけて足を持ち上げる。
壁に背中をつけさせて、ゆっくりと補助者が足を持ち上げていくんだが、これがコトリちゃんは驚くほど上がる。
まあ上がること、上がること。
膝が胸にくっつくって、見たことある?
立ったままだぜ!
「痛くないの?」
コトリちゃん、全然平気な顔。
中国雑伎団もびっくり。
ふっ、と変な考えが浮かんだ。
もう、処女膜ないかも……。
異常なほどの股関節の開き具合を間近で見てたら、マジで、そんなことが頭をよぎった。
ないならないで、いいや。
コトリちゃんが可愛いのに、変わりはない。