黒い訪問者 シークレット-5
「さあ、なつみさん終わりましたよ」
「ありがとうございます」
プレイはあっと言う間に終わってしまった。そしてなつみは服を着た。
「もし失敗したときはまた注入しますから、三ヶ月ぐらい様子みましょう」
「あの代金は?」
「いりません。報酬はもらってますから」
「誰から?」
「いいじゃないですか」
藤本は誤魔化すように笑った。
志津子と藤本は新宿まで一緒に来た。
「じゃ、ここで」
藤本は別れようとした。
「あ、待ってください」
「どうしました?」
「藤本さん、何故今回はマシーンを使ったんですか?私のときは・・・」
藤本は答えなかった。
「藤本さん、あなたは一体何者なんですか?」
「知ってどうします?」
「どうするって・・・知りたいだけです」
「なら君は知らなくていいんだ」
そう言って一礼すると藤本は雑踏に消えた。しかし、志津子は藤本を尾行した。靖国通りを歩いて藤本は花園神社の境内で立ち止まった。志津子は物陰に隠れた。少ししてサングラスの男から現われ藤本に封筒を渡した。お金でも入っているのだろうか。志津子は藤本に気付かれないように封筒を渡した男を尾行した。するとすぐ近くに黒い高級車が止まっていた。サングラスの男はその後部座席に乗り込んだ。隣りには一人の高齢の男が座っていた。志津子は少しずつ近付いた。運転手がエンジンをかけた。そしてこっちに向かって走り出した。そのときその高齢の男の顔を見ることができた。政界のドン、大黒伊佐夫だったのだ。何で藤本さんがあの男と繋がっているんだろう。そのときだった。
「君って人は何て危ないことを!」
手を引っ張ったのは藤本だった。
「さあ、早く帰りなさい。誰かに見られたらどうするんだ」
「どうなるの?」
「早く帰りなさい。それから携帯にもかけてきてはダメだ。もう君と会うことはない。僕のことは忘れなさい」
そう言うと、藤本はタクシーを呼び、無理やり志津子を乗せた。