回天-6
「ところでさ……」
タケルは唇を離すと問いかけた。
ミナがタケルから逃げていた理由はわかった。
おそらくチカから言い含められていたのだ。
タケルには、チカの父親ほどの知識もなければ技量もない。
ヘタをすればミナを壊されかねない。
だから、タケルに近づかないようチカはずっとミナに言い含めていたに違いない。
それに、ミナ自身の男に対する恐れもあったろう。
チカの父親の嗜虐的性行為を目の前で見せつけられたという。
それは、まったく知識のなかったミナにしてみれば、どれほど衝撃的であったか容易に想像はつく。
チカの存在が、かろうじてミナの心を壊さなかった。
でなければ、今頃はタケルどころか、男すべてを嫌悪して指一本触れさせなかったはずだ。
ミナは、男に恐怖したが性行為そのものは嫌悪しなかった。
チカという少女を好きになり、盲目的に彼女のいうがままになって今でも身体を開いている。
おかげでタケルの指は第2間接までミナの中に入っている。
ミナは、タケルに初めてを与えるために膣を拡げる努力までしている。
ミナにこれほどの積極性が出てきたのは、やはりチカの存在が大きい。
今だってミナは、タケルに初めてをあげると嬉しそうに笑った。
「お前、どうして母さんに、お兄ちゃんが悪戯していることしゃべったの?」
ならば、なぜ母親に告げ口をした?
決して褒められることをしているわけじゃない。
むしろ、ひた隠しに隠して、隠密に進めるべき行為だ。
なぜミナが母親にいってしまったのか、それがわからない。
「ミナ、ママにいってないよ……」
「え?」
タケルに向ける瞳に戸惑いの色があった。
「でも、母さん気づいてたぞ」
「え?違うと思う……」
「なにが?」
「だってママ、なにかあったらお兄ちゃんにすぐに言いなさいって、ミナにいってたもん……」
「なにかって?」
「わかんないけど………でも、ヘンなひとを怖がってた……。だから、ミナを守ろうとしてたんだと思う」
「守ろうとしていた?変なひとから?誰だそれ?」
「わかんない………でも……」
ミナは、あの日のことを思い出していた。
そうだ……あの日、ママはヘンなことをいった……。