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愛しい人へ
【大人 恋愛小説】

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1-1

 枕元の目覚まし時計を止めると、習慣として文字盤を見る。
仕事の日にはいつも6:45にセットしているから、見なくてもわかるのだけど。
寒いなぁ。ああ、行きたくない。今日は電車平常どおりなのかな。
そんなこんなでベッドの中でグズグズする所要時間、およそ5分。そろそろベッドから出ないと。うーーん、と伸びをしてから「やっ!」と気合を入れて体を起こした。

 朝はコーヒーを入れるのが俺の仕事だ。インスタントだけれど。
新婚の頃は「今日はブルマン」だの「今日はコロンビア」なんて拘ってコーヒーメーカーで入れていたけれど、子供が出来てからはそんな余裕もなくなった。コーヒーメーカーはスーパーの袋に入れて戸棚の奥だ。
「寒いね」
流し台に向かっている妻に声をかけた。
「うん、寒い」
「足元に電気ストーブ置けば?」
「うん。でも邪魔になるから。麻衣が触ると危ないし」
リビングのエアコンを入れても、キッチンの足元まで暖まるにはかなり時間がかかる。妻は出勤のためのブラウスとスカートに着替えているが、上にはフリースジャケットを羽織り、足元には分厚いソックスを履いていた。
「パン、焼く?」
「パパの分だけでいいよ。これ終わったら自分でやる」
「これ」とは弁当のことだ。
娘の麻衣は保育園で給食が出るが、妻は節約も兼ねて弁当持参。そして俺の分も作ってくれる。大変ならいいと何度か言ったが、ひとつもふたつも変わらないのだそうだ。
テーブルにはすでにハムエッグが出来上がっていた。
朝はTVをつけないことになっている。TVをつけると麻衣がじっと画面を見たまま動かなくなるからだ。
「よし、OK!」
弁当ができた合図だ。俺が入れたコーヒーを一口すすると「うまっ!」と言ってバタバタと娘の部屋へ行く。
「麻衣ちゃん、おはよー。起きようねー」と妻の声が聞こえる。これがそのうち「麻衣!起きなさいっ!」に変わるのだ。

地元のFMラジオが今日の天気を伝えている。昼は3月並の暖かさだが、夕方からぐっと気温が下がる。早くコートが脱げる季節にならないかな。



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