投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

愛しい人へ
【大人 恋愛小説】

愛しい人への最初へ 愛しい人へ 4 愛しい人へ 6 愛しい人への最後へ

1-5

 最近の結婚式は引き出物がコンパクトでいい。
カタログから選ぶタイプだからだ。二次会は辞退して、式場を後にした。
「映画観て帰る?せっかくだから」
「でも、麻衣が待ってるし」
「お義母さんがいるんだから、大丈夫だよ。何かあれば携帯に来るって」
「そうねぇ。映画か、お散歩してお茶?」
「青山とか散歩するか?久しぶりに」
「ついでに、何か買ってくれてもいいですよ??」
「金はかけませんが、愛はかけてます」
「なにそれー?」
妻は明るく笑うと手をつないで来た。

 本当に久しぶりだった。妻をゆっくりと抱いたのは。
夫婦なのにホテルに入るのはなんとなく照れくさかったがこんな機会でもないと来るところではない。
「ちょっと太りました〜」
とおどける妻を見た。確かにストッキングがウエストに食い込んでいた。
「俺も太りました。奥さんの料理が美味いので」
笑いながら抱き合って、キスをした。
「初めての時さ」
「なに?」
「ホテル入っても、おまえ、部屋の隅から動かなくてさ。電気消せだの、顔見るなだの、触るなって言ったの覚えてる?」
「うーん、言った?かも!」
恥ずかしかったんだもん、あの頃は。そう言ってまた笑った。
「早く。夜までには帰らなくちゃ」
「うん」
限られた時間の中で、妻の肌の匂いをかぎ、体温を感じた。



愛しい人への最初へ 愛しい人へ 4 愛しい人へ 6 愛しい人への最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前