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愛しい人へ
【大人 恋愛小説】

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1-3

 俺と妻は大学のゼミで知り合った。
彼女が1学年下だ。ゼミの飲み会で話すようになり、付き合うようになった。
特別美人ではないが、よく笑う明るい子だった。お互い恋愛経験は浅く、キスするまでに3ヶ月もかかったっけ。
俺はなんとかキスしたい。彼女もわかっていながら、恥ずかしいみたいな感じだった。

 彼女の家はけっこう親が厳しくて、デートもバイトもとにかく22時までには帰って来いって決まりだった。
付き合っている頃は、別れるのが寂しくて彼女を家まで送ったついでに家の前で21:55まで話をしていた。そんなだから、俺たちが結ばれたのは付き合ってから半年以上も経ってからだった。今日こそは!と思い、あらかじめ調べておいたホテル近くでデートした。
「いかにも」って雰囲気じゃなく、きれいで、料金も高くないところ。昔ながらの新大久保とか鶯谷なんてもってのほかだ。渋谷もあからさま過ぎる。
俺の大学時代は、こんなことに時間を費やしていたのか。


 夜、鍵を空けて家に入る。
妻と子供はもうとっくに寝ているから、静かに部屋に入って一息ついた。
子供が一人では寝付けないからと、今では俺だけ寝室で寝ている。
リビングを見ると、俺のワイシャツがアイロン台に乗っていた。アイロンをかけている途中で娘を寝かしに行って、自分も寝落ちしたパターンだ。彼女はしっかりしているから、スイッチはちゃんと切ってある。

 会社で洗っておいた弁当箱をテーブルに置いて、俺も寝室へ入った。眠い。早く土日にならないかな。昼近くまで寝て、家族で買い物に行って、夕方からはのんびりと過ごす。
旅行にも行きたいが、まとまった休みも取りにくいし、車もないから子供を連れて電車で長旅も難しい。
 二人でゆっくり旅行に行ったのは、新婚旅行のオーストラリアと麻衣が生まれる前の東南アジアだけだ。
「麻衣が大人になったら、ゆっくり旅行に行きたいね」といつも彼女は言う。

そうだな。君の好きなところに行こう。海外でも国内でもいい。
できたら、海がきれいなところに行きたいな……。


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