ミヤコの願い-1
【ミヤコの願い】
淫らな行為も終わり、研究施設の中に凛とした空気が漂った。こうやってメリハリを付けるのは【O−CLUB】の習わしだった。
ミヤコ、ケイコ、変身を終えたマミ、通常画像の記録スタッフとしてコンドウ、そしてなぜだかミヤコに同行するように言われたハルマを含めた一行は、今回の実験のチーフスタッフのサクマの案内で、その実験施設の場所へと移動した。
「おっ!飛び級の天才も立ち会ってくれるのか。気付いたことがあったら遠慮なく言ってくれよな」
ハルマの姿に気付いたサクマが、ハルマの髪の毛をグシャっと握って、気さくに声を掛けた。
その2人の光景を横で見ていたマミは、さっきのコンドウのときと同様に、ハルマが仲間に愛されていることを感じて嬉しくなった。
一行が実験施設に到着すると、先導していたサクマが、放射線防御の措置を施された重い扉を開いてミヤコたちに入るように促した。ミヤコはサクマに頭を下げると、中の様子を伺うように、そうっと開かれた扉に体を入れた。
「お待たせしました…」
待っていた数人のスタッフが、拍手をもってミヤコを迎え入れた。スタッフ全員、伝説のミヤコの卑猥な行為を喜んでくれていて、中には感極まって涙を流す女性研究員も居た。これはこの研究施設全体の雰囲気を現していた。
「やっぱりお母さんでないと…」
ケイコは偉大なカリスマの背中を見てポツリとつぶやいた。
ミヤコの方は、自分のわがままに付き合わせているにも関わらず、スタッフのその反応に目頭が熱くなってきた。それとともに、ミヤコの中にあった決意がますます強くなっていった。
その思いを一旦内に秘めて、ミヤコはその指示を出した。
「前回の実験で数値的に実証が確認できました。今回はその実態の確認と安定実験を行います。みなさん、それでは始めて下さい」
マミはミヤコの話を聞きながら、スタッフルームの広い窓の向こう側、20m四方に広がる実験室内を興味深く観察した。
スタッフルームと実験室を隔てる窓には、耐久耐塵耐熱耐放射線に優れるS組成型硬質クリスタルが嵌め込まれていて、スタッフルームの安全は確保されていた。
窓の直ぐ向こうに、同じくS組成型硬度クリスタルの小窓が付いた冷蔵庫ほどの物体があり、マミはそれが小型の核融合システムだとは直ぐに気付いた。
わからないのは、直径10cmほどの小型のパラボナアンテナが縦横10列づつ並んだ自走式の機器だった。それが4台あり、実験室の四方から中央にアンテナを向けられていて、それぞれが大容量電力に対応できる太いケーブルで、核融合システムにつながれていた。
「ケイコおばあちゃん、これって核融合システムの安定実験じゃ…」
「しっ!始まるわよ」
恐る恐る聞いたマミの問いをケイコが遮った。