マミの高揚-3
また、個人的なこだわりもあった。記念すべき初めての相手は、ミヤコの一族とするという願望を思春期から持っていた。
初めて精通を迎えた頃に、ミヤコとケイコとユイの特集放送を観たことがあった。セクシーな内容ではなかったが、神秘的で艶やかな3人の姿にドキドキが治まらなかった。
翌日、学校でその話題が出たときに、クラスメートから【O−CLUB】に入れば、あの3人とセックスができると聞いて、ハルマの人生の目標が決まった。
成長するにつれて、ただ入社するだけではダメで、優秀でなければ望みが叶わないと知ると、俄然勉学に力が入った。
【O−CLUB】ではセクシー系が有利と知れば、その部門を希望して入社試験に挑んだ。
そんなハルマの背景を知らないマミだったが、今、ケイコの前で恥ずかしげに俯くハルマを見て、マミの中に眠っていた母性本能が擽られていた。
「じゃあ、被験者として、あたしがお相手してあげましょうか」
そんなマミの変化を知らないケイコが、ハルマに気軽に誘いの声をかけたため、マミは慌てて反応した。
「ダメよ!あ、あたしが被験者になってあげるんだから!」
しばらく前からハルマが気になっていたマミが、場違いな大声を出してみんなを驚かせた。
「あれえ?マミちゃん、どうしたの?そんなに大きな声を出して」
ケイコは楽しそうに孫の顔を覗き込んだ。その視線に堪えれなくなったマミは俯いた。
「あらあら、お顔が赤いわよ。もしかして」
「そんなんじゃないってば」
「うふふ、まだ何もいってないじゃない。じゃあ、『そんなんじゃ』なかったら何かしらね」
「だ・か・ら、あたしは【O−CLUB】のことを思って、被験者になるっていっただけなんだからね。何もハルくんが気にな…」
勢いよく言い返した言葉は、自分の失敗に気付いて途中で止まった。
「えっ?ハルくん…」
世界で一番人気のアイドルから、フランクに名前を呼ばれたハルマはドギマギした。
「ほほう、『ハルくん』ね〜。確かに『HONJOU・HARUMA』って書いてあるわね〜、あたしは気付かなかったな〜」
ケイコはハルマのネームプレートとマミの顔を交互に覗き込んでニヤニヤと笑った。
「もうイヤッ!ケイコおばあちゃんなんて知らない!」
マミは赤い顔を隠すように頭を抱えた。
部屋の扉の向こう側。その扉に背中を預けて中の会話を聞いていたミヤコの目が優しく微笑んでいた。