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ヒューマン・ロール・プレイ
【調教 官能小説】

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〜 技術その5 〜-2

 ……。



 私たちを待っている乳牛(ちちうし)は、視覚や聴覚、嗅覚は必要ありません。 ホルスタインとは異なって、Dランクの乳牛が出産することはありませんから、不要な感覚はすべて塞いであります。 具体的には目隠し、耳栓、鼻チューブ、箝口具がデフォルトとなっています。

 1人の学園生徒につき、乳牛を10匹担当するのですが、全ての乳牛から一定量のミルクを搾りとることが出来れば5段階評定で『5』が貰えると聞きました。

 『営舎』ではすべての乳牛(ちちうし)が発乳するわけではありません。 Eランクであれば『人工ホルモン投与』や『偽妊娠』によって発乳条件を作ります。 一方のDランクでは、本人の意志で『想像妊娠』することにより、ホルモンバランスを自分で整え、発乳するように乳腺を肥大させることが必要です。 といってもすべての乳牛はラインに固定され、並んだケージに四つん這いで納まっていますから、乳腺を刺激する手段がない。 せいぜい胸を揺すったり、震わせたりが関の山です。 なので、私たちが最初にする作業は『発乳補助』、要するに乳牛のおっぱいへの刺激です。

 柔らかい刺激、心地よい刺激は意味がありません。 求められるのは、ただひたすら『強い』刺激。 痛いくらいで丁度いいとされているそうです。 脳内で性的感覚に刺激を変換するのは乳牛の仕事といえましょう。 掌で乳房をビンタする、鷲掴む、乳首を抓って振り回す。 乳房がもげる一歩手前まで変形させながら、左右、前後、上下に引っ張る。 圧しつぶし、揺さぶり、捩じり、雑巾搾りのように圧搾し――道具を使わずに与えられる、ありとあらゆる刺激を送る。 そのうちにそれぞれの乳牛の乳房が潤うような、フィットする刺激が見つかりますから、あとはその刺激を延々繰り返す。 そうすれば遠からず最初のミルクが迸る――射乳といいます――そうです。

 一般に『射乳』に至るまで30時間程度の連続刺激が必要とされています。 私たちは技術の時間のみ乳牛に接するため、そこまでの時間はありません。 なので乳牛に合うであろう刺激を見つけたら、『射乳誘導機』に該当する刺激をプログラムして、あとは機械に任せます。 乳牛1匹につき1台用意された『射乳誘導機』は、私たちの手の動きを乳牛の乳房に再現し、次の技術の時間まで乳牛に継続した刺激をあたえてくれます。 私たちが寮で休んでいる間、乳牛は与えられる烈しい乳房への刺激を脳内で快感に変換し続け、一刻も早く乳腺を活性化させなくてはいけないわけです。

 家畜化された乳牛の環境は、全てCランク以上の牝が管理します。 『給餌』は、乳牛の成長段階やミルク生産量を考慮して調合します。 私たちは『藁中心の飼葉』を8割、栄養剤1割、オートミール1割を混ぜて餌をつくり、少量の排泄物を加えて完成させます。 学園での私たちの食事に先輩方の排泄物を混ぜて頂かなくてはいけないように、家畜への餌には私たちの排泄物が必須です。 混ぜるものは何でもいいため――極端な話、髪の毛でも鼻糞でも小便でも大便でも可――大抵はチョロッと小水を混ぜるそうです。

 乳牛といっても、あくまでヒトです。 ついこの間までは幼年学校生としてまともな食事をしてきた者もいます。 箝口具を外してから鼻先を給餌箱に突っ込んであげれば、大抵の乳牛は必死になって飼葉に喰らいつくのですが、中には飼葉を食べるのを躊躇ったり、戻してしまうコもいるでしょう。 そういう場合は飼葉を口に無理矢理ねじこまなくてはいけません。 家畜としての心構えの第一は、与えられたものが何であれ、ひたすら貪る姿勢です。 容器が空っぽになるまで、餌を胃の中に全力で納め続けるケダモノの姿勢を示すことこそ、家畜としてのマナーだからです。 例え汚物であっても嬉々として貪らなくてはいけません。 それが出来ていないなら、担当する私たちが教えるまでです。 口にねじ込んでから栓をするもよし。 ミキサーで流動食にしてから鼻経由でチューブを通し、直接胃に流し込むもよし。 手段を選ばず食べさせます。 こと乳牛に関しては、食べ残しはあり得ません。

 これが『豚』や『馬』なら、食べさせたところでハイ、終わりです。 けれど乳牛に関してはキチンと『反芻(はんすう)』しなくてはいけません。 一度の胃液で消化できるほど、藁中心の飼葉の繊維は弱くないためです。 そこで一定期間胃袋に納めてから口腔に戻し(つまり口の中に嘔吐する)、再度飲み込ませます。 ホルスタイン牛だと、食べて戻すを10回程度繰り返しますが、ヒトの乳牛であれば『3回』と規定しています。 嘔吐に手間取るようであれば、喉奥に指を突っ込んであげたり、胃袋をお腹ごしに揉みしだく、あるいはお腹を蹴とばすことで嘔吐させます。 中には戻した餌を容器からこぼしてしまう乳牛もおり、食事に対する感謝が足りません。 そういうケースは事前に鼻と口をバインダーで留めておいてから嘔吐させ、一段落してからバインダーを外すそうです。 とにかく乳牛は生き物なので個性があります。 それぞれに体格・性格・能力が違い、飼育する担当は個性を踏まえた対応が求められます。 全個体一律が通じない点は、技術分野で超えなくてはいけないハードルの1つといえましょう。



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