歪曲-19
「なんだ、遠慮することなんかないのに」
さっきまでチカをあれほど痛めつけていた男は、まるで、そんなことなどなかったかのような顔をしていた。
「お母さんが、迎えに来てくれるんだって」
チカは服を着替えて、いつもの表情に戻っていた。
乱れた髪はきれいに整えられ、さっぱりとした顔になったチカは、いつものチカだった。
さっきまで、ミナはチカと一緒にお風呂に入っていた。
ミナが肩を貸して、まだ足をもつれさせるチカを浴室まで連れて行った。
「パパはだめ」
杉崎も一緒に入りたがったが、チカが一蹴すると、思いのほか簡単に引き下がった。
「いつも、あんなことするばっかじゃないんだ。だから、困るんだ」
チカは、去っていく父親の背中を眺めながら、溜め息まじりにぼやいていた。
なんか、奇妙な親子だった。
浴室に入ると、ミナは、痛めつけられたチカの身体を、甲斐甲斐しく手のひらでいたわるように洗ってあげた。
夕べタケルから教えられたことを思い出して、ぺったんこの胸に泡を塗りたくると、チカの胸や背中に滑らせた。
「どこでそんなこと覚えたの?」
チカは最初こそ驚いていたけれど、ミナが無理をして平気な顔をしているものだから、途中からは、おかしそうに笑っていた。
石けんが染みてチカが痛そうな顔をすると、ミナは泣きそうになって噛まれた乳房を確かめた。
やわらかそうな盛り上がりに歯形がうっすらと残っていて、ナイフを当てられた乳首もほんの少し切れているようだった。
見つめているうちに悲しくなって、ミナは無意識に口に含んで舐めていた。
「痛い?……」
今にも泣き出しそうな顔で見上げていると、チカが嬉しそうに笑いながら、胸にあるミナの頭を抱え込んでキスをしてくれた。
そのままふたりは浴室の床に倒れ込んで、しばらく唇を重ねつづけた。
「あ……あ……」
ミナのたどたどしい喘ぎ声が浴室の中に聞こえるようになったのは、唇を重ねながらチカがミナの性器を愛撫していたからだ。
塗れた石けんが潤滑剤となって、昼間にされたのとは比べものにならないほどの気持ちよさがミナを包んでいた。
そこには、チカに対する愛しさもあったのかもしれない。
好きなひとにしてもらえる嬉しさは、無条件に身体を昂揚させる。
膣のなかに指を入れられても、痛みはそれほど感じなかった。
痛みどころか、物足りなさまで感じて、自分から指を深く欲しがったほどだ。
「ほんと、ミナって、いやらしい子なんだね」
チカに気付かれて、おどけたように笑われたけど、恥ずかしさより、チカの可愛がってくれる悦びのほうが強かった。
「ミナも洗ってあげるよ……」
ちょっと意地悪な顔になって、ささやいたチカは、さっきミナがそうしたように自分の胸に泡を塗りたくると、ミナの胸に肌を重ねてきた。
自分の突起をミナの尖りに当てて円を描くように胸を動かした。
「あ……いや……いや……気持ちいいよ……気持ちいいよ!」
最後は叫ぶまでに気持ちよさを訴えたのは、やはりチカがミナの性器を愛撫したからだ。
上は濡れた肌で薄い乳房を愛撫され、下は濡れた指の腹で巧みにクリトリスを刺激されて、ミナは素直すぎるほどに可愛い声を出して気持ちよさを訴えた。
ミナの頭がぼうっとしてきた頃に、チカはミナの頭を跨いで立つと、自分の指で性器を割り開いた。
「舐めて……」
ミナは、催眠術にでもかかったかのようにぼんやりとした目を向けながら、チカの前に跪くと、股間に顔を埋めていった。
縄できつく締めあげられていたそこは、赤く腫れていて、その痛みを拭い去るかのように、ミナは舌を動かした。
ミナが目を閉じながら素直に舐めていると、チカは大事そうに頭を撫でてくれた。
途中、不意にどろりとしたものが喉の奥まで流れ込んできて、ミナはむせ返った。
「パパのだよ」
チカはくすくす笑いながら、自分の膣のなかに指を入れると、ミナの喉のなかに流れ込んだものの正体を見せてくれた。
わずかに白く濁った指の匂いを嗅ぐと、生臭い異臭がしてミナは顔をしかめた。
「ミナのお兄ちゃんもおなじ匂いだよ。それでね、これが赤ちゃんの元になるものなの」
「赤ちゃんの?」
「うん。わたしにはまだ生理がないけど、生理が始まれば、わたしにだって赤ちゃんができるようになるの。そうなれば、これをそのまま入れられたら、すぐに赤ちゃんができちゃうのよ。」
「せいりって、いつになったら始まるの?」
ミナは、まだ保健体育で女の子の授業を受けていなかった。
「ひとにもよるけど中学生になる前には始まる子が多いみたい」
ミナは、少し考える仕草をして、
「じゃあ、まだまだだね」
と、無邪気な笑顔を見せた。
それが、どれだけ恐ろしいことかをミナはまだ理解していなかった。
体を洗い終えると、ふたりは一緒に湯船に浸かって、向き合いながら、何度も長いキスをした。
湯船から出てからも、チカの唇が欲しくて、ミナは何度もねだるのをやめなかった。
脱衣所の中でも服を着ながら、バカみたいにふたりでキスを繰り返した。
「ミナはもう、チカのものだからね。お兄ちゃんにもあげないんだから」
服を着終えると、ふくれたような顔になって、チカはミナを抱きしめた。
もうすぐミナが帰ってしまうのを惜しがる気持が十分に伝わってきて、ミナは嬉しかった。