今夜、七星で Yuusuke’s Time完結-8
「んっ、知ったって、私はっ」
切れ切れに椿さんがなじる。
あー、もう吐息すら惜しい。
愛しい、甘やかしたい、優しくしたい。そう思う一方で、壊したい、傷つけたい、独占したいなんて思わずにはいられない。
あー、あーーーーー!
「……駄目だ、俺待つとか無理」
唇を離して銀糸を舐めとる。
抱きたい。椿さんを、抱きたい。
「優しくとか、甘やかすとか、俺そんなに気が長くねーよ。破壊衝動っつーわけじゃないけど、独占欲は強いみたいだ」
「え?え?な、なんのこと?」
「知らなくていーよ」
ぎゅっと抱き締める。
うん。知らなくていい。これは俺の今後の問題だし。つか、既に後回しだけど。
「抱きたい」
抱き締めたい、じゃなくて抱きたい、の本心なら解るよね?
「や、ここじゃ、」
いや、こんな寒空の下じゃ俺の方こそ遠慮願いたいよ。
つか、この時点でオッケーしてるとか、マジで俺のこと好きじゃね?
「いいんだ。俺のこと好きかわかんねーのに、やるのはいいんだ」
くすくす笑って嗜めると、一気に顔を火照らす椿さん。
「え、ちがっ!こんなところじゃ絶対嫌って言うか、あ、や、そもそも嫌だって言う意味で!」
「今更言い訳とか無意味ーっ」
笑って、ゆっくりと掌を手にとる。指を絡めて繋いだ手は、思った通り冷たかったがあまり気にならない。
「行こ」
「え、だから、その、ゆーすけ君!」
「ホテルにする?それとも俺んとこ迄行く?」
「なんでそうっ、ゆーすけ君全然前と変わってない!」
「えー?変わったよ、俺椿さんのこと結構好きって認識したし」
笑いながら大通りに出てタクシーを拾おうと車道に出る。
ホテルはー、うーん。やっぱ家の方が落ち着くよなー。
「結構とか、全然曖昧すぎ!それに私だって返事してなっ」
「高田馬場迄。はい、車内では静かにね」
走り出す。俺の気持ちもヤバイくらい走り出してる。
この人が好きだ。
椿さんが好きだ。
逃がさないように掌を握り、不平を漏らす唇を塞いだ。
街の灯りが窓越しに流れるように線を引く。ラジオのBGMが耳をくすぐり、滑らかな黒髪に指を絡めているうちにアパートの前に静かに停車した。
釣り銭をヒップポケットに突っ込み、椿さんの手を引いてエレベーターに乗り込む。指を絡めると掌から温もりが伝わる。空いた片手でボタンを押したまま、まだ迷いの色を見せる顔を覗き込んで唇を重ねた。