Yuki:「肌のキャンバス」-1
―――これ、きっと明日になったら消えちゃうから…。
あの日、初めて瑠奈に求められたような気がして、今までにないほど興奮してしまった。
今度は、目立たないけどはっきりと分かる場所に痛々しいほど、痕を残してきた。
瑠奈の大きな乳房の谷間や、下と、横にも。
本格的に瑠奈の体を汚してきているような感じがするが、キスマークが切り傷や痣のように見えてしまって、少し痛々しい。
陽が浴室から、自分の部屋に戻ってくるまで俺は瑠奈の体を貪り続けた。
陽は再び受験勉強の日々に戻り、俺はまた瑠奈の体に甘える生活に戻ることとなった。
休みの日の学校や、夜の公園、時には砂浜の陰で俺は瑠奈の体を触っていた。
ただ、以前とは異なり、瑠奈も俺のことを気持ち良くさせてくれるようになったことだ。
まさかこんな風になるとは思っていなかったのに。
これも全て陽のおかげ、といったところか。
俺はただ、瑠奈の喘いでいたり、気持ち良くなっている表情を見たり、快楽の悦びの声を聞いているだけで満足できていたはずなのに。
一度こうなってしまうと、もう転がり落ちるように、自分の欲望に歯止めが利かなくなってしまう。
「昨日、また瑠奈ちゃんで抜いちゃった…。」
「また、私…?動画とか見ればいいのに。勇樹くんが好きそうな人、いっぱいいるじゃん。」
瑠奈とのメッセージのやり取りは、時々こういう話になっていたのが、今では毎日のやり取りへと変わっていた。
動画は動画でいいものだが、瑠奈の体は高校生という完成間近だが、不完全な肉体と程よくついた贅肉が俺の性欲を更に掻きたてた。
「瑠奈ちゃんの体が、一番良いよ。柔らかい体、可愛い喘ぎ声とか、もっと聞きたい。」
「もう、変なこと言わないでよ。男の子と違って、いつでも私はそういうことできるわけじゃないんだよ?」
長かった夏休みは、もうじき終わりを迎えようとしていた。
田舎へ帰省したり、突然機嫌が悪くなったり、体調が優れなかったり。
女性の体は、男と違ってデリケートだ。
そんな日が続いて、夏休みの最後の方は会えない日々が続いていた。
「課題もやらなくちゃいけないし…。もうすぐ文化祭じゃない。勇樹くん、部活で出しものとかあるでしょ。」
瑠奈の体に夢中になっていた俺は、そんなことはすっかり頭に入っていなかった。
「確かに…。俺も色々やらなきゃいけないこと…あるんだった。瑠奈ちゃんに無理させちゃってごめん。」
「この間は、言い過ぎちゃった。ごめんね。だから…。」
(また今度。)というスタンプが瑠奈から送られてきて、俺はその夜にまた瑠奈の体を思い出して自慰行為をした。
この夏にあった、多くの刺激的な出来事の余韻からなかなか覚めることができず、課題をやるにしても、美術部の創作にしても、あまり手が付かなかった。
瑠奈の「また今度」というスタンプのことを思い出して、そこからは夏休み明けの課題の提出と、文化祭の準備へと打ち込む事にした。
夏休みは終わり、無事に全ての課題を提出し終わって、また新たな課題に直面する。
美術部は、文化祭の装飾の花形であり、本格的にその作業を進めるべく、毎日のように学校に残っていた。
門や、お化け屋敷、劇の背景の担当など、少ない人数でたくさんの作業をこなさなければならず、性欲とは無縁の生活を送っていた。
瑠奈からメッセージが来ることはあったが、俺のメッセージは基本的に部活の作業の進展具合の報告をしているだけで、直接瑠奈と会う時間はなかった。
それに、別校舎にいる瑠奈ともすれ違いもしなかった。
瑠奈と会わない日々が続いて、文化祭の当日まで残り2日となった。
2日前から、学校に申請すれば泊まり込みの作業が許されるため、俺たちは夜通しで学校に残ることになった。
しかし、ほとんどの人間は前日に泊まり込みをする者が多かったが、俺の作業は遅れていたために、俺だけが2日前から泊まり込みの作業をすることとなり、学校へ残った。
学校の全ての授業が終わって、文化祭の準備をするクラスや、部活動の生徒たちが集まり始める。
でも彼らの大半は、文化祭の準備はあくまで口実で、学校に泊まるという思い出作りに張り切っている者ばかりだった。
自業自得だが、作業が終わらず苦戦しているの傍にそのように盛り上がっている生徒たちがいるのは残酷だと思いつつ、作業を続ける。
それから、どのくらい時間が過ぎたのかわからなかったが俺の作業は一段落し、スマートフォンの時計を見ると21時を過ぎていた。
空腹にも耐えかねていた頃だったので、外で夕食を調達しようと思い、昇降口へと出る。
「勇樹くん!」
聞き覚えのある声が後ろから聞こえて、振り返ると、瑠奈が下駄箱で靴を履きかえていた。