Yuki:「肌のキャンバス」-3
俺の作業を手伝うと言った瑠奈と学校へと戻り、再び部室の前に着く。
「入っていい?」
いいよ、と俺が言うと、俺以外の部員がいるわけでもないのに、律儀に「失礼しまーす。」と言いながら瑠奈は美術室のドアを開ける。
「実行委員の時は、陽ちゃんと話に時々ここへきていたけど、改めてこうじっくり見るのは初めてだなぁ。」
と、瑠奈は部室の壁にかかっている絵を見る。
「ねぇ、勇樹くんはどんな絵を描いているの?」
瑠奈は無造作に置かれているキャンバスの絵を1つずつ見て回る。
「そこのキャンバスの絵。それが俺が描いたやつ。」
と指を差すと、瑠奈はキャンバスの前に立って「うーん。」と首を傾けている。
「林檎の絵…?美味しそうだね。上手に描いてる。絵の上手い人って羨ましいなぁ。」
と瑠奈はこちらを見て笑った。
上手くなんてない…。本当に描きたいものは、林檎なんかじゃない。
俺が描きたいのは―――。
「…ってこんなこと言ってる暇ないよね…。とりあえず何から手伝えばいいかな?」
喉元まで出かかった言葉が、瑠奈の一言で現実に引き戻されてハッとする。
「じゃあ、そこに紙たくさんあるからさ、それでペーパーフラワー、紙の花をたくさん作ってくれる?」
「入学式とかで作るあれだよね?やってみる!」
瑠奈はそう言って、色紙を何枚か手に取ってソファーに腰掛ける。
瑠奈の体を思い出して、自分の下半身が盛り上がってるのを感じるが、遅れていた作業を取り戻すべく、今は目の前にあるゲートの色塗りの作業に集中することにした。
瑠奈は片方の耳で音楽を聞きながら、機嫌がよさそうにどんどんペーパーフラワーを隣の机に積み上げていた。
時々、どこかの教室から笑い声が聞こえたりして、きっと他のクラスや部活は、もっと楽しそうにしてるんだろうな、なんて考える。
きっと怖い話をしたり、好きな人が誰なのか話したり。
この部屋には、そんなことはなくただ一人の男女が別々の作業をしているだけだ。
俺と…エッチな体をした女の子。
つい、瑠奈の体を想像してしまう。
高校2年生とは思えない、大きく実った胸と、程よい肉付きの体。
抱きしめるとどこまでも食い込んでしまいそうな、女性らしい柔らかい体。
きっと、瑠奈とクラスが一緒の男子は皆、瑠奈で色んな妄想をしたりして、自慰行為に勤しんでいるのだろう。
胸の大きな子は、常に男子の視線を嫌でも集め続けることになる。
屈んだ瞬間に見える胸元や、髪を掻き分けた時に脇と袖の隙間から見える下着と横から見える胸、白いシャツから透ける下着の柄も、俺たち男は絶対に見逃さない。
きっと誰かが必ず見ているはずだ。
俺のクラスにも、そういう女子生徒はいる。
瑠奈もきっと自分のクラスの男子の視線をたくさん集めているはずだ。
体育の時の時間に運動して揺れる瑠奈の胸や、プールの授業でスクール水着に納まらない瑠奈の胸や、体の肉という肉を常に見られているに違いない。
きっと、俺も瑠奈と同じクラスだったら、そういう男たちと同じように瑠奈をずっと見続けて、叶わぬ欲望を自分の右手で慰めて抑えるしかなかっただろう。
楽園の果実が、美味しそうに実っているのを「美味そうだなぁ…。」とか「美味しそうな色をしているなぁ。」と眺めて満足するのとあまり違いはないと思う。
胸を激しく触りたいとか、精液を飲ませたいとか、大概はそれを想像するだけで終わる。
だけどもしも、禁断の果実を口にして誰にも咎められないのであれば…知ってしまったら、もう止められることなんてできない。
最初は遠慮して、あまりにも過激なことは避けるようにするんだ…。
でも、どんどん好奇心が強くなっていく。
「ここを触ったらこんな風になるんだ…じゃあ次はこうしてみよう。」
というようにトライ&エラーを繰り返していくうちに、深いところまでどっぷりと浸かってしまう。
一度汚したら、俺が責任を持ってとことん汚してやりたいんだ。
ペニスの勃起を抑えようと、必死に目の前の作業をこなそうとするが、妄想は止まらなかった。
そんなことを考えていると時間が経ったのか、賑わっていた他の教室の生徒の声もあまり聞こえなくなった。
作業が一段落して、静かになったのが他の教室の生徒の声だけではないことに初めて気付く。
瑠奈の聞いていた音楽は、CDのトラックを全て再生し終えて静かになったようだった。
そして、瑠奈は作りかけのペーパーフラワーを床に落として寝息を立てていた。
物音を立てないように、瑠奈の傍へと近づく。
幼い子供のような、無垢な顔で静かに瑠奈は眠っていた。
遅くまで学校にいて、疲れてしまったのだろう。
瑠奈の顔は、年齢よりも少しだけ幼く見える。
少し垂れ目で、目の淵にホクロがある。口はそんなに大きくない。
少し大人びた中学生って思う人もいるかもしれない。
でも…。そう思いつつ、瑠奈の顔から上半身へと目線を下に移していく。
その童顔とは不釣り合いな、発育しすぎたこの胸…。
寝息を立てる度に、少しずつふくらんで上下している。