終章-3
「響子がオレとした時の初体験のビデオもあるぞ。観たいか」
「え〜、お母さんの初体験?観たい観たい」
春奈が嬉しそうにする反面、響子の顔面は見る見る内に青くなってきた。
「何だって?一体どういうことだ?」
拓哉の睨みに響子は、正直に答えるしかなかった。
「ご、こめんなさい。1度だけお兄ちゃんとしたことがあるの。でも、1度だけよ、それも無理矢理なんだよ。お兄ちゃんたら酷いんだから…」
拓哉の心はざわついだが、自分の肉棒を握り締め、涙を浮かべて弁明する響子を見ている内に、赦してやろうと思い始めた。普段から徹に対して悪く言っているので、その言葉を信じたのだ。それに、拓哉も自分の過去もそうそう褒められたものではないことを自覚していた。
「そ、そうか…。中学生だったら20年以上前のことだしたな。ま、まあ、1回だけならいいだろ」
「拓哉くん…」
寛容な夫を前に、響子の目から涙がドンドン溢れてきた。
「響子…」
2人はヒシッと抱き合った。そんなラブラブの2人に水を差す徹の言葉が届いた。
「それと、これが高校生の時の響子とのハメ撮りだ」
響子は抱きつく拓哉の身体を突き飛ばすと、その言葉を発する途中の徹にダッと駆け寄り、手にしたDVDのディスクを引ったくった。
「このボケー!何でこんなのがあるんや、あたしが一人暮らしをするとき、全部あたしにくれたんちゃうんか」
「お前にやったんはダビングや」
あっさりと徹は答えた。
「どアホ!全部棄てたる」
「ええで。オリジナルあるから、ナンボでも焼けるから。因みに、こっちが拓哉くんを連れて結婚の挨拶に来た時の実家でのハメ撮りな」
「うっ…」
それだけは言ってはならなかった。当然のことながら、それを知らなかった弘美が反応を示した。知っていれば、その話題も昨日に出たはずだった。
「なんて?あんたらそんなことしてたんか?そう言えばあの時、2人して拓哉さんとあたしにばっかりお酒を勧めてたな。その割りにあんたら兄妹は全然飲んでなかったやないの。最初からやるつもりやったんやろ」
さすがの弘美も徹に詰め寄った。
「わはは、すまん、やってたんや」
悪びれる風もなく、徹はアッサリと認めた。
「もう、やったらやったで、ちゃんと言うてって昔から言うてるやんか。今度からちゃんと言うてな」
やれやれと顔を振りながら、弘美もアッサリと引き下がった。
「そしたらついでに言うとこ。このDVDが去年泊まりに来た時のハメ撮りや」
「えええっ!あの時も飲め飲めと勧めながら、後で2人でやってたん?」
「弘美は生理中やったからな」
「そういえば、あの時はそうやったかな。なら仕方ないか。でも、してるとこ見せてくれても良かったんとちゃう?」
弘美がくだけた調子で残念そうにいったが、その和やかな雰囲気とはまるで違う視線を、響子はさっきから背中に感じていた。
その痛いまでもの熱い視線に、響子は恐ろしさの余りに身震いしていた。