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ヒューマン・ロール・プレイ
【調教 官能小説】

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〜 音楽その1 〜-4

 やがてサビの部分を演奏し終わり、【B2番】先輩が目で合図を送ったところで、【B29番】先輩がハミを外す手伝いにかかりました。

「ん〜……あかっ……あん、んあ、んっ」

 螺子を緩め、ハミを外します。 涎まみれになったハミが外れたあとの、【B2番】先輩の口許は真っ赤でした。 その色合いは、凡百の言葉よりも鮮明に、いくら強固にハミを噛みしめていたか私に理解させてくれました。 逆にいえば、あそこまでキツく咥えて初めて、リコーダーの演奏ができるということです。

 先輩の唾の香りがするハミを回し、22番さんと私でリコーダーを練習しました。 最初、どうにか自力でハミを固定しようとしたものの、あと一息が押し込めません。 躊躇って動きが止まった途端、ピコン、バシッ、デコピンとビンタです。 【B2番】先輩のデコピンは全然痛くありませんが、【B29番】先輩のビンタは手加減の欠片もありません。 

「ぜんぜん浅いです〜」

「どこ見てたわけ? 半端でやり過ごす気なら、はっ倒すよ」

「手伝っちゃいましょう」

「見て分からないなら、やってみるしかない」

 2人係りでハミを押し込まれました。 息がつまり、口が裂けそうになり、ここまでするかって泣きそうになりましたが、顎が外れる寸前で許してくれました。 

「んぐっ、んぎぃ……んむ」

 なるほど、やられてみれば納得です。 深く咥えれば咥えるほど、舌を動かすスペースがハミの下にできます。 唇を前にだせばリコーダーを吹けそうだし、ベロがつりそうになるものの、どうにかタンギングもやれそうでした。

 結局、先に22番さんがタンギング込みでリコーダーを吹き、次に私が音を出すことができました。 どうにかメヌエットを10小節目までビンタなしに演奏できた時、【B2番】先輩が微笑みながら頭を撫でてくれました。 口全体がジンジン痛むのを忘れるくらい、嬉しかったです。 ついニヒリズムに陥りがちですが、まだ私にも素直な気持ちが残っていた、ということでしょうか。


 ……。


 リコーダーに続いて【B2番】先輩が取り出したものは、よく似た形の『縦笛』でした。 リコーダーと違う点といえば、ラッパ状に広がった先端と、全体的に大柄なこと、材質が木製という点でしょうか。 【B2番】先輩が縦笛の名前を教えてくれました。 『尺八』といい、旧世紀古代の和式楽器なんだそうです。 リコーダーと同様『エアリード楽器』で、低い音程が長続きする点に特徴があるんだとか。

 古来はそのまま先端を咥え、タンギング無しで安定した低音を吹くやり方でした。 現代の学園では、先端部分を全て咥え、口先ではなく喉奥から息を吹き込んで演奏します。 つまり、10センチ以上ある突起全てを喉まで突っ込んで口腔に納め、喉を窄めることで気道と楽器の空道を連結し、気管から直接息を送り込むことで音を奏でなくてはいけません。 【B2番】先輩曰く、吐気さえコントロールできれば比較的簡単に演奏できる。 ただし尺八の奏法『メリ――顎を下げて音を1オクターブあげる』と『カリ――顎を挙げてオクターブ下げる』の吐気だけは耐えるのが並大抵じゃなくて、先輩でもえづいてしまうそうです。 一方で【B29番】先輩的には、喉奥に直接蓋をされる感覚が強烈で、個人的には尺八が一番苦手な楽器だと教えてくれました。 

 【B2番】先輩が朴訥な旋律で手本のメヌエットを吹いてから、私と22番さんが練習しました。 22番さんは殊の外手こずり、咳込んだり噎せたりで、最後まで楽器本来の音色が出せなかったです。 何度ビンタされても尺八を吐き出してしまうため、とうとう先輩方も匙を投げました。 『1人の時に、指を喉に突っ込んでも噎せない練習をする』ということで、22番さんは切り上げです。 一方で私は全然苦労せずにメロディーが吹けました。 尺八をバカ正直に咥えるんじゃなしに、少し傾けて吹き口が喉と直に触れないよう呑み込んだのが、良かったんじゃないかと思います。 この方法を『22番さんに教えようかな』とも思ったんですが、せっかく私独自の工夫です。 もう少し大事にしてもいいかな、黙っておこうかな、なんて思っています。




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