俺だけをみて!-3
「巴ちゃん、とってもお上手ですー。」
「はっはぁー、当然だろ?才色兼備巴様なんだからぁ!」
広大な山々、そして無限に広がる白銀の世界。スキーを存分に楽しみリフトで会話をする
二人の背中に視線を置き。
「…もしここに風馬君が居たらどうなってたんだろう。」
「はっ!?」
お爺さんの話を真に受けたか、ここでもそんな話をする。
「何よー、あんな奴の名前何か口にするなって、折角の楽しい旅行が。」
「でもっ!あの騒動だって、別に彼一人が悪い訳じゃ。」
「……はぁーーー、このお人よしバカがっ!!そんなのアイツが勝手にやった事でしょ!
自分に振り向いてくれないからって人の弱みにつけ込んで…。」
「その原因は私にある訳だし、彼だって彼なりに。」
「まっ、本当ならあんなストーカー野郎今すぐにでも突き出してやりたいけど。」
「そんな事したらいくら巴ちゃんでも、絶交だよ?」
「分かってるってばっ!私はただアンタを護りたいだけなんだから。」
「巴…ちゃん。」
「冬休み終わるの少しおっくうねぇー、まっ安心しなよ、もしアイツが学校で若葉に近寄って来たら蹴飛ばしてあげるから!」
「う、うん…。」
自宅に押し掛ける危険性も否定は出来んがな。
「流石柊さん、あんな人でも色々と気に掛けてるんだね。」
「……。」
確かに、そういう所が俺にとって好きな所でもあるのだが。
「巴はあぁ言ってるけど、君だって権利はあるよ、あの人が近寄って来たら。」
「それは勿論分かってる!」
「あたる…。」
「けど、アイツはもう危害を加える気はないんだろうっ!!」
「……。」
俺を刺して何時間も生死の境を彷徨わせてから、アイツなりに急に怖気づいて、それ以来
戦意喪失し、家に押し掛けたりする事もなく、去年のイルミネーションも態々タクシーを
呼んで助けてくれたらしく。
「勿論アイツに用心する事は確か…、でも騒動はもう静まったんだろ!」
「それは、まぁ。」
そうこう話してるうちに頂上へ着き、二人は間髪入れず滑りに行き。
ちょっと乱暴な足取りでリフトを降り、二人が滑り出した場所へ足を動かす。
頭が何だかモヤモヤする、要するに。
「もうアイツの事何か考える必要何てないだろっ!なのに…。」
「そういう事。」
どこかモヤモヤしたまま、滑って小さくなっていく彼女についていく俺。