高校時代-2
治療を終えて、家に帰る。
母親が、ちづるに声をかける。
「おかえり。病院、混んでた?」
「んーん。今日はそんなでもなかった。」
2階の自分の部屋に行こうと階段を上る。
「すぐご飯だからねー。」
「分かった。」
自分の部屋に入り、ドアをバタンと閉めた。
ポケットからタオルを取り出す。
小さいタオルを眺める。
「、 、 、、 、 、 。」
持って、帰ってきちゃった、 、 。
どうしよう、 、 、。
先生、今頃気がついたかな、 。
『あれー?私のタオル、誰か見なかった?』
看護婦にそう聞いている先生の画が目に浮かぶ。
来週の月曜、診察の時に、
ベッドの近くに、 、
あ、ベッドの下に置いちゃえば、落としてた、って思うかな 、。
、 ? あれ ?
タオルを、顔に近づける。
あ、 この匂い、 、
いつもの 先生の、 、 、
その時、1階から声がした。
「ご飯出来たよー!
ちづる、お兄ちゃんに声かけておりてきて。」
「、っ、、、、、分かったー!」
慌ててタオルを枕の下に入れる。
中学生の時から、ちづるは自分の部屋で、ベッドで寝ていた。
夕飯を食べて、お風呂に入る。
家族に「おやすみ」を言い、自分の部屋にくる。
ドアをバタンと閉める。
ベッドに横になり、枕の下のタオルを取り出す。
タオルの匂いを嗅ぐ。
「、、、、はぁ、 、いい匂い、、
香水 ? なんの香りだろー、、。」
その夜タオルを持ったまま眠った。
次の日。
学校が終わり、放課後に友達に誘われてT駅で遊ぶ。
プリクラを取り、駅ビルの洋服屋や雑貨を、友達と見る。
ふと足を止めて、友達に言う。
「あ、、ちょっと、あそこ見ていい?」
「香水? 私も見るー!」
先生と同じ香りを探す。
もし、 、
見つかったら私も同じの
買おうかな、 、
そう思っていたが、同じ香りは見つからなかった。
家に帰り、夕飯とお風呂を済ませ、部屋にくる。
また、昨日と同じように、タオルの匂いを嗅ぐ。
「んー、、、香水、じゃないのかなぁ、、?
柔軟剤? せっけん?
んー、、、、」
ちづるは、それから、町やドラッグストアでその香りを探したが結局、見つからなかった。
5日目になると、香りが少なくなってきた。
今日も、ベッドでタオルの匂いを嗅いでいる。鼻の上にタオルを乗せて、深呼吸をしている。
「、、、先生に、なんの香りか、
聞こうかな、、。
でもなー、 、 、」
『香水 、 使ってますか ?』
『シャンプーって、
どこのを使ってます?』
「、 、 、 、 。」
どの言い方をしても、自然な言い方にならない気がする。
ぎこちない気がする。
明日には、 、もう、この匂い、なくなっちゃうかも、 、 、 、、
「、 、 、 、 、 」
胸の奥が、切なくなる。
タオルを鼻の上に乗せたままモソモソと枕を股の間に挟んだ。
自慰のやりかたは、この時はまだ知らなかった。
知らないが、ほんの少しだけ、腰がゆらゆらと揺れていた。
、 、 早く月曜に、 、
ならないかなぁ、 、 。
また、先生、、 ほっぺ 撫でて
くれるかな、 、
あ、 そーだ 。
学校で、うまくいってないって、 、
ちょっと オーバーに言えば、 、
先生 心配して また、 、
撫でて くれるかも、 、 。