人に言えない響子の卑猥な黒歴史-3
話はさらにこの日の昼、徹一家に招待される前日の昼に遡る。
「お義姉さん、明日の歓迎会、みんな楽しみにしてるんですよ」
「あら、そう言うて貰うと嬉しいわぁ」
響子と春奈と勇気は、弘美が運転するステップワゴンに乗って、大型のショッピングモールに遊びに来ていた。そのショッピングモールの奥まった場所の喫茶店で、響子は弘美と寛いでいた。
春奈と勇気は同じモールの映画館で、春休みロードショーのアニメ映画の観賞中で、後1時間は出てこない。
映画が始まる前に子供たちと一緒に買い物を終えたので、もうしばらく、女同士での会話を楽しめた。
響子にとって弘美とは、ただの小姑の関係ではなく、中高の先輩後輩の間柄で、昔からお互いの存在を認識していた。徹と弘美が付き合い始めたのは、響子が中学1年生の冬のことで、徹たちの受験が終わった頃だった。
そのときは兄の恋人に積極的に交流を持とうとは思わなかったし、響子が結婚してからも、遠距離ということもあり、普段の交流は余りなかった。
そんな空白期間があったにも関わらず、去年泊まったこともあって、今回、打ち解けるまでそんなに時間は掛からなかった。それには受け身だった響子に対し、弘美が積極的に働き掛けていたことが大きな要因になっていた。弘美が気さくで優しいと気付いた響子も心を開いていったのだ。
「拓哉さんも、もうこっちに慣れたんかな?」
「どうでしょ。朝は中々起きなくなってますけど」
「そうなん、朝がねえ。でも朝起ちがなかったら、ちょっと女の立場としては心配やね」
「えっ?お、お義姉さん、そっちの話じゃなくて、朝中々起きないって言ったんです」
「あっ、ゴメン。脳が勝手にエッチな方に変換してたわ。おほほ」
まさかの義姉の卑猥な冗談に響子は戸惑った。しかし響子はまだ知らなかった。それが弘美の本来の素の反応であることを。しかし、この無理やり感のある間違え方は、弘美がある意図を持って、敢えて間違えていたのだ。
実際、響子が抱いていた弘美に対する優しく爽やかなイメージは、この直ぐ後に砕かれてしまうのだった。
「それはそうと響子ちゃん、ちょっと聞きたいことあるんやけど、少しだけいい?」
「ええ、どうぞ」
ニコニコとしながら切りだした弘美に、響子は快く応じた。
「徹から聞いたんやけど、徹と響子ちゃんて、昔、兄妹でやってたそうね」
弘美が意味深な目線を向けて言った言葉に、響子はドキッとなった。
「な、何のこと…」
【やってた】という言葉に思い当たる節はあったが、とりあえず惚けることにした。
「うふふ、隠さんでええよ」
弘美の笑みの中に、卑猥な色が見えた。
ドキドキドキッ!
「だ、だから、何のことですか!」
隠さないといけない兄妹間のことは1つしかなかった。
慌てたこともあり、ついつい響子の口調が荒くなったが、弘美はそんなことを気にしていなかった。
「何のことって?それは…」
弘美は意味深な笑みを浮かべながら、響子の耳元に唇を寄せると、擽るように囁いた。
「オ・メ・コ♪」
「ひっ…」
擽ったさのあまりに響子は肩を竦めた。
「うふふ、兄妹でセックスしててんやろ。2人の近親相姦は徹から全部聞いてるよ」
耳を擽る吐息のような囁きと、その内容に響子の下半身はジンと痺れた。しかしそれはそれ、響子の感情は怒りで沸き上がっていた。
「あのボケが〜、一生秘密にせなアカン特殊な黒歴史やのに、何をベラベラしゃべっとんねん」
恥ずかしさと怒りで真っ赤になった響子が唸った。
「いいよいいよ、気にしてないから。それよりも響子ちゃん、こっちの言葉に戻ってるやん」
「うわ、ホンマやわ。大学からずっと向こうやったから、全然使てなかったのに」
大学へ進学を機に地元を離れて17年。すっかり地元言葉を使わなくなっていたが、変な切っ掛けで自然とそれが口から出ていた。
何よりも、兄の徹には昔から苦々しい思い出があり、その都度『あのボケ〜』と思っていたので、今回もその思いが切っ掛けとなったようだ。
徹との苦々しい思い出は、中学1年の初夏の頃、自室でのオナニーを見つかったことが原点だった。
『見なかったことにして』
泣きながら忘れてと頼んだところ、『もう1回見せてくれたら綺麗サッパリ忘れたる』の言葉を鵜呑みにしたことが悪かった。