親族晩餐会-1
【親族晩餐会】
引っ越しを終えてから数日が経った週末、徹一家から夕食の招待を受けた。
「いらっしゃい。さあ、入って入って」
嬉しそうに出迎えた叔母の顔を見て、春奈は去年の歓待を思い浮かべて嬉しくなった。料理の得意な弘美のおもてなしに、前回も大満足していたからだ。
「お義兄さん、今日はお招きいただいてありがとうございます」
案内された豪華な食事が並んだテーブルに着くと、拓哉が感謝の意を込めて頭を下げた。
「ははは、拓哉くん、そんな他人行儀はなしな。ところで春奈ちゃん、もうこっちには慣れたかな?」
照れを隠すように、叔父の徹が春奈に優しく声を掛けてくれた。
「あっ、はい。でもまだ学校が始まってないので、落ち着かないです」
気兼ねのない叔父に、春奈は素直な気持ちを伝えた。
「心配せんでエエって。お母さんが同じクラスになるように、学校に頼んだから。学校ではオレに任せとけ」
勇気の気遣いにも、心が熱くなった。春奈はうっすらと涙を浮かべて素直に感謝した。
「ありがとう」
「あらあら、せっかくの歓迎会やのに、しんみりしたらアカンやん。さあ、食べて食べて」
涙もろい叔母の弘美が、目に浮かんだ涙を誤魔化すように促した。
「そうよ、せっかく用意してもらった料理が冷めちゃうわ。お義姉さん、いただきます」
響子の言葉に続いて、『いただきます』の声が唱和した。
「美味しい♪」
「ホンマに?叔母さん、喜んじゃうわよ」
春奈の感想に、弘美は満面の笑みを浮かべた。
その後は弘美の料理を堪能しながら、お互いの近況を話し、これからのことも話題にして、楽しい時を過ごした。
後片付けの手伝いも終わり、一息ついた春奈は居間のソファーでくつろぐ勇気の横に腰かけた。
「ふう、勇気って幸せ者ね。あんな美味しい料理を毎晩食べられるんだから」
「あんなん毎晩とちゃうで、いつもはもっと手抜きや」
「こら、失礼なこと言いな。勇気は何食べさせても全然感激せえへんから、もう食べさせんとこかな」
一区切りがついて、団欒の輪に加わった弘美が、勇気の言葉を咎めた。
「うっわ、出たで。親力乱用が」
「うるさい子やな。勇気なんかはどうでもいいわ。春奈ちゃん、手伝ってくれてありがとう。お陰さまで早く片付いたわ」
「いえ、美味しい料理をありがとうございました」
「勇気、聞いたか今の言葉。ああん、こんな可愛い娘が居る響子ちゃんが羨ましい」
「ふふふ、お義姉さん、春奈も家では同じですよ」
「同じやって♪」
響子の言葉に、分の悪かった勇気の顔が輝いた。
「勇気は黙っとき。ところで春奈ちゃん」
春名に向いた弘美の目が楽しそうに笑った。
「はい」
「うふふ、春奈ちゃんて去年よりオッパイが膨らんでるんとちゃう?」
「えっ?」
「そんな揉みたくなる胸してるんやから、もうオメコにも毛が生えてんねやろね」