ハッピーイルミネーション-6
「へぇー、アイツが。」
「私も驚いたわ、最初。」
それから私たちも巴ちゃん家を後にした。「家まで送ろうか?」巴ちゃんの姉、多江さんが誘ってくれたのだけど、低調に断った。片手に酒瓶顔は真っ赤な人に車を出したらどう考えても警察と病院のお世話になりかねない。
「ったくどういう風の吹き回しだよ、…まさかそうやって油断させて。」
「そんなまさか…、油断何かさせなくたってその気になれば。」
「…アイツの肩、持つんだな。」
×悪そうな目で見つめる彼。
「べっ、別にそういう訳じゃ。」
「……はぁーあ、イルミネーション、終わっちゃうなぁー。」
「少々残念です…。」
「柊…さん。……御免。」
「佐伯君。…まぁ仕方ないよ、お祭りにトラブルは付き物、いいじゃない、後々良い思い出になるんだろうからさ。」
「あはは、そうだね。」
道に並ぶぼんやりと輝くイルミネーション、ここは会場じゃないから人気も少ない。
「でも、やっぱり少し残念かな。」
「そうだよな、向こうにはミュウヘン市何てモノもあって、それにテレビ塔からの景色も
観せてあげたかったのに…。」
展望台から見上げる魔法のような最高に素敵な景色らしかったようで。
「ほんと、御免。」
「…別に私は良いのよ、ミュウヘンもテレビ塔も。」
「……。」
「ただ、君と一緒に過ごせる時間がなくなってしまった事が…。」
そう、イルミネーションの輝きやミュウヘンでの素敵な物よりも彼…との時間が他の何よりも大事。
「だから、欲を言えば佐伯君という温もりが不足していた事が…ちょっと。」
「………。」
「なーんて我儘ですよね!じゃ私はこれで。」
バス停へ駆け寄る私、しかし彼は返事も無く、代わりに。
「え?………あ。」
グイッと腕を引っ張られ、そして顔を近づけ、キスをする。
「……。」
その口づけは、今年一年の終わりを告げる12月の冬に相応しい肌寒さをも、柔らかくそして優しく暖かい唇だった。
「……今年はこれで許してくれ。」
「…次は、期待してますからね!」
「あぁっ!」
キラキラと輝くイルミネーションが、今年一年を彩る。
第19話に続く。