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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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ハッピーイルミネーション-5

「ひとーーつっ!」
「ぎゃ!」
「ふたーーーつっ!!」
「ほんげぇぇーっ!」

巴ちゃんの居間から上に聞こえてくる巴ちゃんの声と佐伯君の悲鳴、いや断末魔。

「お、おいっもう少しソフトに治療を…。」
「うっせーよっ!自分から誘っといてバッカじゃないのっ!うりゃ!」
「ひぐわぁっ!おめー手当てするのか暴力振るうのかハッキリしろっ!」

あ、暴力は振るわれても良いんだ。

「調子に乗ってスケートでカッコつけて、せっかくのデートを中止、挙句あの子に肩を
貸してもらって…。」
「れ、連ー助けて。」

どうやら一条君も巴ちゃん家で過ごしていたそうで。

「良いよもっと鳴いて頂戴、嗚呼素敵な悲鳴。」
「てめ、何だよそれ。」
「ビデオカメラ。」
「知っとるわ、なーんでそんもん。」
「いつか同窓会や結婚式にでもと思って…。」
「分かった、分かったから助けてヘルプ、ミー!」
「タイトルは「僕等の微笑ましい日常(笑)」にしようかと。」
「うー、話は聞かないわタイトルにあからさまな悪意が…。」

あ、見せるのは構わないんだ。

「死ねぇぇぇっ!」
「ほんげぇぇぇぇぇぇぇっ!!召されるぅー。」

つい数週間前、生死の境を彷徨い、彼の生還を願った人とは思えないような台詞が。

律儀な所もある私はタクシー運転手さんに巴ちゃんの住所を伝えた、横でうなってる佐伯君は、「そこより近い病院あったろ」と虫の息で申していたけれど。

兎に角大した事がなくて良かった。

居間のソファーで大人しく待つ私、すると視線を感じ振り向き。

「……。」
「………。」

風馬…君。

まさか彼がタクシーを呼んで。私とそれに佐伯君の為に。

私と視線が合うもすぐに逸らされ。

困惑するな…。一体どんな言葉を掛けるべきなのか…、全く分からない。

「警察。」
「!」
「どうして突き出さないの?」
「それは、だって。」
「お母さんも何も知らない感じだし。」
「ん…。」
「僕が君らに何をしたのか。」
「勿論だよ、嫌がる私にしつこく付きまとって…、それだけじゃない、巴ちゃんの弱みに
つけ込んだり、佐伯君を早乙女先輩を利用して困らせて、挙句あんな事を。」
「だったら、どうして。」
「君のやった事は許さないよ、でも…突き出す気になれない。」
「君は本当に甘いな、それでもしまた僕が君を襲ったりしたら…どうするの?」
「そんな事しないよ、もし本気なら今すぐにでも鉈でも引きずって私の所に来れば良いし
もしそうなら佐伯君はあぁやって2階で楽しくしてないし、ここにだって…。」
「……。」
「どうなの?今の心境は?」
「君こそどうなんだ。」
「正直、風馬君の事は好きはなれない、でも君があそこまでしたのには私にだって責任は
あると思う…。」
「若葉…ちゃん。」

タクシーを呼んだのには彼なりに葛藤があったのかもしれない。

「言っとくけどタクシーで助けてあげたのは別に。」
「分かってる、私の為…でしょ?佐伯君の為じゃなくて。」
「あんないい加減な奴のどこがいいのさ。」
「いい加減…、まぁ確かに彼は不器用で適当な所もあるし、現に今日だって。」
「若葉ちゃんっ!」
「!」

急に声を上げ、私の所へ来て私の顔の横に手の平をドンと押し。

「僕ならっ!…僕なら、そんな事しないよっ!」
「……。」
「クリスマスデートだって君が満足の行くようにリードして見せる、彼何かよりずっと
しっかりしてるし頭だって良い!」
「風馬…君。」

顔があまりにも近い。必死に問いかける彼、だがその表情は前のように悪意は感じず。

「今までの悪行はいくらでも謝るっ償うっ!だからなかった事にして欲しい!」
「………。」
「だから、お願い…僕を…好きに、なって。」
「風馬…君。」

苦痛に滲んだ大粒の涙、彼は…そこまで。

私は、ゆっくり優しい手つきで彼を押し避け。

「御免なさいっ!!」
「!!」

力一杯に彼に頭を下げる。

「それでも私は彼は佐伯君が大好きなの。」
「……。」
「彼と居るとなぜだか暖かくて、それに笑顔がとっても素敵、私は彼のあの太陽のような
あの顔が大好きなの。」
「そう、だよね…。こんな性悪ストーカー何て。」
「そんな事…、悪い悪魔に憑りつかれただけだよ、嫉妬…という。」
「若葉…ちゃん。」
「その原因を作ったのは紛れもなく私達。」

だから元の風馬君だってとってもふんわりとしててとっても優しい人、昔のように。

断られてフッと私から離れ、敵でも見るような目で私を睨み付ける。

一瞬、まさかと思う。

「くっそー、あの暴力女&性悪男…、いつか覚えてろ。」
「!!」

佐伯君が階段で降りていくのを知り、私たちはハッと振り向く。

「じゃ、僕はこれで。」
「……。」

彼に会いたくないのか、颯爽にこの場を後にする。

「怪我は大丈夫?」
「あぁーあはは、その質問、色々と複雑だねぇー、……あ。」

それから挨拶をするでもなく夜の街へと消えていった。

「……あいつに何かされたか?」
「……。」

静かに首を横に振る。

彼のその背中はとても薄暗く見えた、


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