母海-1
暗く暖かい波の中 ただただ貴方に会える日を待ちわびていた
段々と形づくられ 貴方に似始めた僕を早く見てほしいと
いつも優しく語りかける貴方
そのそばで聞こえる違う音は明らかに僕を不安にさせた
あの日 貴方は泣いていた『ごめんね』
意味なんかわからなかったただとても悲しかった
足元に光が見えた 僕はまだ未完成
敵意をもって鈍い光が僕にむかってくる
狭い暗やみを必死に逃げた冷たい金属を未完成の小さな手で握り締めて
貴方の悲鳴が聞こえた
とても とても悲しい叫び待ち焦がれた貴方に ほんの一瞬出会えたけれど
その胸に抱かれることもなく 貴方の悲しい顔だけが深く冷たい世界へ連れていく 唯一の宝物になった