もっとカゲキに愛して-7
「真緒、愛してるよ。俺ももう……イキそう。あぁ、出そう。イク、イクッ」
そう言って、彼がわたしをぎゅっと抱きしめて大きく突いて静止した。
男根の動きを蜜壺に感じながら、わたしはゆっくりと目を閉じた。
──目を覚ましたとき、彼はとなりで小さな寝息をたてていた。
どうやら彼が達した瞬間、わたしは気を失ってしまったらしい。
規則正しく上下する彼の胸。
初めて見る寝顔。長い睫毛がまるで付け睫毛のように綺麗に重なり合っている。
「ん……」
あ、起きちゃう。せっかく見られた寝顔、もう少し見ておきたかったのに。もう少し慎重に動けばよかった。
彼が目を擦りながら、ごろりとこちらへ身体を向けた。
「真緒……」
ぎゅっと、痛いほどに抱きしめられる。首輪のチェーンは外されていた。
「俺、真緒のこと、好きすぎるくらい好きだ」
胸がきゅっとなる。
わたしもですと返事をする。わたしも、緒方さんのことが好きすぎるくらい好きです、と。
彼の手がわたしの後頭部の髪を梳くように動く。大きくてあたたかい手。
「愛してるよ。真緒も俺のこと、もっともっと愛して」
「はい。緒方さん……愛しています」
「そろそろ、その緒方さんって呼ぶの、やめない?」
「えっ、……篤志さん、ですかね、それじゃあ……」
「そうだね、だって結婚したら真緒も『緒方さん』になるだろ?」
「えっ──」
彼の瞳にわたしがうつっている。ゆっくりと唇が重なる。
涙が溢れた。
「泣くなよ」
「だって……」
「俺と結婚したくないの?」
「そんな──そんなこと、絶対にないですっ」
「じゃあ、結婚しよう」
「はい──」
改めて、ご両親の元へきちんと挨拶に伺いたいから──と彼が言った。それに、俺の親にも会いにきてほしい、とも。
わたしはもちろんですと言って頷いた。
胸が詰まるような感覚。
結婚、挨拶、顔合わせの食事会──雑誌の中に並ぶ言葉が次々と飛び出してくる。
「聡くんにスピーチをお願いしたいね」
「あっ──そうなんです、聡にお願いしたいって思っていて」
「うん。名取にも頼もうかな。あいつのおかげであの日真緒を誘うことができたし。いつ頃会社に報告するかだなぁ。とりあえず、真緒のおうちに挨拶に行って、それから俺のところに来てもらってからかな」
「あ……そうですね……」
「俺から話をするからね」
「はい、お願いします」
再び唇が重なる。
彼がわたしの唇を撫でるようにキスを繰り返した。
リョーコさんにも報告をしなくっちゃと思った。
どこかのカフェあたりで紹介しようかしら?
リョーコさん、何て言うかしら?
どんなふうに彼を評するんだろう。
リョーコさんまで彼に惹かれちゃったらどうしよう?
だって、彼はほんとうにかっこよくて素敵なひとなんだもの──。
「真面目な話をしているときにアレなんだけど、またヤリたくなってきちゃった」
そう言って彼がわたしを組み敷いた。
首輪の下あたりからゆっくりと舌がおりてくる。
「くすぐったい」
「愛してるよ。これからもずっと、愛してる」
「わたしもです。篤志さん……愛しています。これからも、ずっと」
わたしたちの物語はまだ始まったばかり。
これからたくさんの季節を彼とともに過ごしていく。
彼がわたしにキスをして、わたしたちは再びひとつになった。
彼が何度も繰り返す。もっと愛して、もっと俺を求めて、と。
わたしも同じように繰り返す。愛しています、ずっとあなたが欲しかったんです、と。
言葉が徐々にその過激さを増していく。
潤いも増していき、お互いがお互いを欲するままに貪りあう。
二度と離れまいとするように、身体がお互いに絡み付いていく。
彼がため息のような声を洩らした。
わたしたちは指を絡めあって、深く深く繋がっていった。
「もっと愛して。もっとたくさん、キスをして──」
《了》