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カゲキに愛して。
【女性向け 官能小説】

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約束-4

 うわぁ。そうだったっけ……。
 わたしはニコニコ微笑む聡を見ながら、しまった、と思った。昼に交わしたやり取りを思い出す。聡も知ってたんだ……。

「ふぅん、そっかあ。そうだったんだね……。聡くん、何か真緒について知ってること他にない? 俺が知らないようなこと」
「うーん、そうですねえ……」
「ちょ、ちょっと、そういう話は本人がいないときにするものじゃないでしょうか……」
「ははっ。じゃあ、聡くんのメールアドレス、聞いちゃおうかなぁ」
「えっ」

 聡とわたし、同時に声をあげる。
 緒方さんってば、早速スマートフォンを取り出して準備をしている。
 聡が、いいんですかと聞いた。もちろんと緒方さんが答える。

 そんなふたりを見ながら、これはややこしいことになりそうだと思った。
 だって……聡──完全に目からハートマークが出てきそうになってるんだもん!(表現、ちょっと古いかしら)

 あぁ……これって、やっぱり……。
 わたしたち三人、三角関係の予感──!?


***


 その後、三人での食事会もなんとか無事終わり、わたしたちふたりをおろしたあと、緒方さんはそのままタクシーに乗って帰って行った。
 お礼のメールをしたら、明日の約束のことを忘れないでねと返信がきた。

 深夜。
 どうにも眠れなくて、キッチンでこっそりホットミルクをつくる。
 小さなホーローのお鍋で、じっくり弱火でコトコトと。

 牛乳をあたためるだけなのに、どうしてこんなに甘ったるいにおいがするんだろう。
 でも、どこかホッとするにおい。

 そうだ、緒方さんからもらった蜂蜜をひとすくい入れてみよう。
 下着も、まだあけていない。

 カップとスプーンを手に、部屋へ戻る。
 夜は耳が痛いほどに静かで、そして昼間には気にならない音が耳につく。

 ふと、小学生の頃に体験した林間学校での夜のことを思い出した。
 夜に活動する生き物たちの発する音や、昼間は気にならなかった樹々の葉の擦れ合う音、風の音が気になってなかなか眠れなかったときのこと。

 まわりのみんなは眠ってしまっていて、起きているのはわたしだけだった。
 自分だけが取り残されたような、心細い気持ちになった。
 みんなの寝息だけが頼りだった。
 わたしはひとりじゃない。寂しくない。そう思いながら、何度も寝返りを打った。

 翌日の朝、顔を洗うときに聡が声をかけてきた。どれだけホッとしたか──。

 人懐こくて愛らしい聡。
 わたしは彼を守ろうとしながら、自分もまた彼に守られて育っていった。どの季節もいっしょにいた。たいせつな、ほんとうにたいせつな存在。

 もし、もしも聡が緒方さんを好きになってしまったら──。
 わたしはどうしたらいいんだろう。

 カップをベッドサイドのテーブルに置く。
 真紅のリボンを解き、お店のロゴが前面にプリントされている同じ真紅のリボンがかけられた黒いギフトボックスと、濃いピンク色のバラの造花と白いレース、そしてゴールドのレースがかけられた白いギフトボックスを取り出す。

 わたしはプレゼントの包みを開ける瞬間が昔から大好きだった。
 胸が高鳴る。

 まずは蜂蜜のほうから。
 黒いギフトボックスのリボンを解き、丁寧に開けていく。

 スノードームをひっくり返したような、ころんと丸いフォルムの瓶。
 ふたの上にラベルシールが貼られてあり、瓶のくちの下に麻紐が結わえられ、丸いタグがついている。

「綺麗……」


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