きっかけ-5
わたしが絶頂に達したすぐあと、緒方さんが男根を蜜壺から引き抜き、わたしの腹部に白濁した液体を勢いよく吐き出した。
迸った液体は胸元を越え、放心するわたしの鎖骨あたりまで飛んだ。
「──はあっ、はぁっ」
緒方さんが荒い呼吸のまま、大量のティッシュを使って優しくわたしの身体を拭う。
肌触りのいい、柔らかいティッシュだった。
「三回目……書くね」
脱力したわたしの太ももの付け根に横線を書き足す。
「あー、でも俺もイッちゃったからなあ。もうちょっと篠崎さんをイカせたかった」
その声がなんだか拗ねたように響いて、わたし、思わず脱力したままくすくすと笑ってしまった。
彼が笑うなよ、と言ってわたしの乳首をきゅっと摘んだ。わたしはビクンッと身体を震わせて短い声をあげた。
「ねぇ、篠崎さん。俺の彼女になってよ。順番、逆になっちゃったけどさ」
「順番?」
「ほんとうはちゃんと告白してから……って思ってたんだけどね」
「わたしで──いいんですか?」
「篠崎さんがいいんだ」
「……嬉しい、です」
こうして、わたしたちの交際はスタートした。
わたしは信じられないやら幸せやらで、少し泣いてしまった。
緒方さんが泣くなよと言って、ぺろりとわたしの涙を舐め取る。
「かっこいい……」
「馬鹿。何言ってんだよ」
笑った顔が、さらにかっこよくてドキドキした。
このひとがわたしの彼氏。
信じられない。
みんなの憧れの上司が彼氏になるなんて──!
「篠崎さんって、えっちな身体してるね。おっぱい、すごく綺麗。顔もえっちな顔してる」
「えっ、恥ずかしい……」
「この、くちの左下のほくろとかさぁ。目の大きさの割に三白眼気味で、ほんと色気あると思うよ」
「そんなこと──言われたの、初めてです。いつも目つきが悪いって言われていたので……」
「そこがいいんじゃん。強気そうな顔。めちゃくちゃにしたくなる」
彼がにやりと笑った。
そして、閉じていたわたしの膝を強引に割って言った。
「たとえば、こうやって無理やり挿れてさぁ」
「いっ──あっ、あぁっはぁんっ」
「激しくピストンしたあと、とめる、とかさぁ」
「あぁっあぁんっはあぁんっあっあっ」
「いい反応するよね、篠崎さん」
胸元に何度もくちづけをされ、愛のしるしをつけられる。
部屋に入るまで寒い寒いと言っていたのに、今は軽く汗ばんでいた。
うちの会社の新年会は、忘年会とは違って各チームごとに行われる。だからこそ、こうやってふたりになる機会もできたわけだけど──とにかく急展開すぎて、わたし、正直なところ展開に思考が追いついていないみたい。身体だけが先に彼のペースに巻き込まれている。
その後もわたしは彼によって何度もイカされ、そのたびに太ももの付け根に『正』が完成していった。
その『正』は羞恥心を煽り、かつてない快楽が全身を駆け巡っていった。
「──はぁっ、はあっ」
肩で息をつく。
明かりを落とすことなく肌を合わせていたことに今初めて気がつき、慌てて身体を隠すように彼の胸元に顔を埋めた。
「ん? どうかした?」
緒方さんがわたしの髪を梳きながら優しい声で言った。
彼の声は甘く低く、そしてとても心地よく響く。この声も彼が人気者である理由のひとつだった。
「いえ……、幸せだなって思って……」
厚くてしっとりとした胸に顔を押し付けていると、なんだか涙が込み上げてきそうだった。
ドキドキする。
呼吸を整えながら、名取さんにどんなふうにお礼を言おうかと考えた。甘いものがお好きだったかしら。
「俺もだよ。あ、ねえ。真緒って呼んでもいいかな?」
「えっ、あっ、はい……。あっ、でも、会社では今まで通り苗字で呼んでいただけると助かります」