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カゲキに愛して。
【女性向け 官能小説】

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きっかけ-10

 ネイリストのお姉さんとおしゃべりしながら指先を彩ってもらう時間は、とても贅沢で、そしてこころが躍る特別なものだった。

「いいわねぇ。アタシもそろそろ新しい男が欲しいわあ。ガッチリマッチョな可愛い男、いないかしらね」
「そういえば緒方さん、ジムに通ってるって言ってたなあ……」
「あらやだ。どこのジムかしら」
「緒方さんを狙うのはやめてよーっ」
「アタシ、スーツの男より作業服の男のほうが好みなの」
「緒方さんなら作業服も絶対似合う気がする」
「まぁっ、やっぱり一度お会いしなくっちゃ!」
「えぇっ、やだよっ」

 ふと、リョーコさんはどんなひとと付き合ってきたんだろうと思った。
 ダンサーだったというのだから、華やかな恋愛をしてきたのかな。

 リョーコさんも恋に破れて泣いたり騒いだりしたのかしら。
 いつも元気で明るくて、パキパキしているリョーコさんの涙は想像がつかなかった。でも、きっとわたしよりも色々な経験をして、色々な思いを抱いているはず。

 いつか聡が言っていた。自分がヘテロではないことへの負い目があるって。
 両親に対してだったり、世間体だったり……。
 リョーコさんも悩み、苦しんできたのかなあ。

「リョーコさんっ。わたし、今日はたっぷり飲むわーっ!」
「んまぁっ、嬉しい言葉ね。アタシ、張り切っちゃうわよ」

 笑い声が店内に響き渡った。


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