サプライズ-7
「ふん……ふんっ」
そして尿道に残った精子を美奈の顔に振りかけると、亀頭の先でぐりぐり、マーキングでも
するようにまんべんなく塗りたくった。
「ん、んん……」
されるがままに潤の無体を受け入れながら、美奈は細い舌をちろりと出して口周りについた
ザーメンを軽く舐め取る。
「ふふ、潤くんの、美味しい……」
独り言のように呟く美奈の表情は蕩けるような恍惚に満ちており、その瞳には不気味なほど
妖艶な光が宿されていた。
トンネルを抜けた電車が、穏やかな陽射しの中を軽快に走っていく。幻影はいつの間にやら
消え去り、車窓を流れるのはいつもと変わらぬ平凡な街並みだ。
「……」
康太は黙ってうつむいたまま、ぼんやり目に映る自分の足を見るでもなしに見つめている。
まさか。
いくら何でも、そんな。
こんなの、バカバカしいにもほどがある。
頭をよぎった妄想を打ち消すように、康太は否定的な見解をいくつも重ねた。
(でも……)
これは本当に、単なる被害妄想なのだろうか。
知らぬは自分ばかり。
その可能性は確かにあるのだ。それはもう、十分すぎるほどに。
「くっ……!」
康太の動悸が、急に激しくなる。
――今にして思えば、兆しはあった。
それは、チームのフォワードが集まってサッカー談義をしていた時のこと。
「俺、人のもん盗るの好きなんすよね。自分で組み立てるより、誰かが持ってるものを横から
かっさらっていくのが楽しいタイプ。で、盗ったらあとは好き放題って感じで」
潤はさらりとそんな言葉を口にした。
それを聞いた時、康太は普通にサッカーの話だと受け止めた。
相手の持つボールを奪って、自在にゴールを決めるのが楽しい。そんなちょっと性格の悪い
プレイスタイルを自慢げに披瀝したという、ただそれだけのことだと思った。
だが、あの時。
潤は確かに、康太の目を正面に見据えながらそう言ったのだ。