サプライズ-5
康太の両目に映ったのは、自分には今まで一度たりとも見せたことがない、美奈の心からの
笑顔。
そして、
「や、やめろ……」
餌を待つ雛鳥のように唇を差し出す美奈に潤がついばむようなキスを与える、決定的瞬間。
「あ、あ、あ……」
「ドア、閉まります。ご注意ください」
血の気を失う康太をよそに、車内には無機質なアナウンスが流れた。ドアが閉まり、電車は
一度大きく揺れてから、再びゆっくりと走り始める。
「あ……」
人目もはばからずに口づけを交わす潤と美奈の姿がみるみるうちに小さくなり、やがて粒と
なってはるか遠くへ消えていった。
「……」
康太は吊り革をつかむことも忘れて、ただ呆然と車内に立ち尽くしている。
さっきまでの浮かれぶりとは一転、今度は顔面蒼白となった少年に、乗客の訝しげな視線が
続々と集まってきた。
「!」
ガタンゴトンと単調な音だけが響く車両を、突然深い闇が包む。
入ったのは、長いトンネル。
狭い空間に入ったことでいきなり質の変わった滑走音が、耳障りにこだまして康太の鼓膜を
ごうごうと鳴らした。
「……」
康太は思考を停止したまま、窓の外に広がる漆黒をぼんやりと眺める。
(……え?)
目の前に、有り得ない二人の有り得ない姿が、何の前触れもなく浮かび上がってきた。
「よっ……と」
犬のように四つん這いになった美奈に、潤が後ろからずぶりとペニスを挿入した。
「あっ、あぁっ! いい、いいのぉ!」
まだ入れられただけにもかかわらず、美奈は左右に首を振ってよがりながら、卑猥な動きで
いやらしく腰をくねらせる。
「おお、もうぐっちょぐちょ」
ウォーミングアップのように軽く腰を前後させながら、潤はにやりと口角を上げて笑った。