サプライズ-2
登録はフォワードだが、控え選手。それもスーパーサブなんてご立派なものではなく、終了
間際に出場して時間を稼ぎ、チームの逃げ切りに貢献するという「終わらせ屋」の役ばかり。
たまに長い時間出ることがあっても、見た目と同様の地味なプレイしかできないため、豪快な
シュートや華麗なパスで目立つ展開などは望みようもない。
そんな康太が突然行動を起こしたことは周囲に驚きをもって迎えられたが、だからといって
並み居るライバル達が焦り、嫉妬するようなことはまるでなかった。
それどころか、
「三島が美奈ちゃんに告白するだぁ? うーわ、何それ。超おもしれーんだけど」
可愛くて人気のあるサッカー部のアイドルにパッとしない「終わらせ屋」が突撃する構図は
部員一同の失笑を買い、ついには心ない冷やかしの餌食となる始末であった。
「つーかそんなの鼻で笑われて終わりじゃんよ、普通に」
誰かが言ったこの言葉が、全員の抱いた気持ちを的確に代弁していた。
康太の恋が成就するなんて、誰一人考えもしなかったのだ。
実を言うと、康太本人も上手くいくとは思っていなかった。
勝算なんてどこにもないが、とにかくこの気持ちを伝えるだけ伝えたい。
康太の心は、ただその一点にのみ集中していた。
――だが、あの日。
「ずっと、好きでした。俺と……付き合ってください」
「うん……いいよ」
奇跡は、起きた。
一度きりのアタック、玉砕は当然覚悟の上と腹をくくって告白した康太に、美奈はそこらの
量産型アイドルよりよほど素敵な笑顔で応えてくれた。
『……は?』
結果を知った周囲の男達はそう言ったきり、呆然と言葉を失うばかりだった。
康太に怒りを覚える者。
美奈に幻滅してしまう者。
ただ自分の無力を恥じる者。
人によって反応はまちまちだったが、全ては後の祭り。結局最後は、狐につままれたような
顔を見合わせながら、皆で黙り込むよりほかなかった。
「マジかよ、信じらんねーな。お前、夢でも見たんじゃねーの?」
「うん……なんか、俺もそんな気がする」
茶化す友達に返した康太の言葉は、嘘偽りのない、心からの本音であった。