サプライズ-10
こんなの、よくあること。
元々自分なんかにはもったいない彼女だった。
潤なら、美奈とも釣り合いが取れる。
結局収まるべきところに収まったという、ただそれだけの話。
「取ら……れた……」
散々自分を守るための思考を巡らせてから、改めてそう口にしてみると、その惨めさが嫌と
いうほど噛み締められた。
「美奈……」
康太がぽつりと、奪われた彼女の名を呟く。
その一言をかき消すように、通過の特急が轟音と爆風をまき散らしながら、康太の前を通り
過ぎていった。
それと、同時に。
「!」
康太のスマホが、ポケットの中でぶるぶると震えた。
届いたのは、二通のメール。
「……」
それは予感というべきか、それとも確信というべきか。
康太は気持ちを鎮めるように一度深い息を吐くと、おぼつかない手つきでスマホを操作し、
虚ろな目でメールの中身を確認する。
一通は、美奈から。
「ごめんね」
題名欄の四文字が全てを物語る、康太に向けた簡単な別れの挨拶であった。
そしてもう一通の送り主は、潤。
「ばれちゃったんで」
タイトルだけで本文のないそのメールには、数枚の画像と一本の短い動画が、開かれるのを
今か今かと待ちわびるようにちんまりと添付されていたのであった。