柔らかい朝-2
弘美の顔にもう涙はなかった。
カーテン越しに入ってくる柔らかい陽光のなかで、弘美の顔は喜びに満ちていた。
千帆も嬉しくなり、弘美の頭を撫でた。
「これからは便秘にならないように気を付けようね」
「うん。この大学にも慣れてきたし、もう大丈夫かなあ…」
弘美に不安と迷いのような影がさした。
「この大学や寮生活がストレスだったの?」
「受験の時、この大学は第一志望じゃなかったんです。本当は浪人するつもりだったんですけど、何だかんだで、ここに入学することになっちゃったんです。寮生活そのものは嫌いじゃないんですけど、便秘が始まっちゃって…」
千帆は黙って聞いている。
「それで、わたし、本当に行きたかった大学を来年再受験しようか、ずっと悩んでいたんです。」
「でも、皆第一志望で入ってきた人ばかりじゃないわよ。再受験するにしても、それはそれで大変ね」
「それはそうなんですけど…」
弘美は言葉に詰まった。
やはり自分の中でまだ迷っているのかもしれない。
目の前にいる千帆はどうなのだろうか。
「ところで、千帆さんは、どうしてこの大学に入学することに決めたんですか?」
「わたし?わたしは特に何も考えていなかったなあ」
「というと?」