奥でうごめく指-13
(弘美ちゃんに摘便はまだ早すぎた)
千帆は少し反省した。
この子はゆっくり育てていけば良い。
まだ先は長いのだ。
「それにしても、肝心のウンチは出そうにないね?」
弘美はうなずいた。
「トイレでもオナラだけは出るんですけど…」
「それじゃ、お薬飲んでみる?」
千帆は再び奥のカラーボックスへ向かい、薬を取ってきた。
弘美に手渡したのは、可愛いパッケージのよく知られた便秘薬だった。
「わたし便秘症だから」
千帆は自嘲気味に小さく笑った。
「いろいろすみません」
「いいのよ。これでも出なかったら遠慮なくいつでも来てね」
弘美は千帆に感謝した。
もう一人で悩みを抱え込まなくて良いのだ。
(体調のことだけでなく、何か悩みができたら千帆さんに相談してみよう)
大学に入学して以来ずっと落ち着かない気持ちでいたが、今初めて心が安らいだような気がしたのだった。