母からの電話-6
外で共同トイレの扉が乱暴に開く音がして、誰かが弘美の隣の個室に入った。
個室の扉を閉める様子もなく、いきなり不気味な声が聞こえてきた。
「ウゲェーー!」
その声のあとに水様物が便器に叩きつけられる音が聞こえた。
バシャ、バシャ、バシャ〜
おう吐物の音だ。
「た〜け〜しぃ〜、そんな〜に、ほしいかぁ〜」
なにか酩酊した声が聞こえてきた。
まだ午後の8時くらいだったが、すでに酩酊するほどどこかで飲んできたようだ。
パシャーー!
喉から吐しゃ物が放出された音が再び聞こえた。
「ゲホッ!ゲホゲホ…」
安い焼酎のような臭いが、わずかに漂ってきた。
咳き込む声や乱暴にトイレットペーパーを回す音が、薄い壁を通じて生々しく伝わってくる。
弘美の尻穴は緊張してぴっちりと閉じられてしまった。
やっと活動を開始した腸はピタリと止まってしまい、便意はどこかへ行ってしまった。
酩酊した隣室の彼女は、おう吐すると少し落ち着いたようだ。
「あ〜、ちきしょ〜…」
そう何やらつぶやきながら、トイレットペーパーで口を拭っているようだ。
水洗水を流す激しい音が聞こえてきた。
「さぁ、飲むぞ〜」
まだ飲み足りないのだろうか。
彼女は騒々しくトイレから出ていった。