母からの電話-5
額に汗がにじんできた。
「なんで出ないの?」
ビクともしない自分のお腹に弱気になる。
「うう〜ん、キィーー!」
「ヒィーー!」
「はぁ、はぁ…」
まったく便が出る気配はなかったが、弘美の努力はちょっとだけ報われた。
菊のようにしわの寄った尻穴の中心が震えたのだ。
ブピッ!
滑稽な音を立て、わずかにガスが出た。
このチャンスを逃すまいと、弘美は力んだ。
プピィーー!
ブピピィーー!
かん高い笛のような音色を響かせ、ガスが放出された。
便器内に放出されたガスはトイレの個室内に拡散していく。
長期間の便秘により、ガスは強烈な悪臭を放つ。
もともとは食べ物だったものが時間をかけて腸内で腐り、たい肥のように臭いガスが生産されるのだ。
「うっ!」
弘美は自分自身で放った匂いに攻撃され、思わず顔をしかめた。
情けない気持ちになったが、振り払うように再び踏ん張る。
これはチャンスだ。
ガスが出てきたということは肝心の便が出てくるサインかもしれない。
努力が実り、ようやく排便の兆しが見え隠れしてきたのだ。
「うんんんぁ〜〜!」
再び唸り声をあげて下腹に力を込めた。