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秘密は21号室で
【同性愛♀ 官能小説】

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母からの電話-2

「あ、そういえば、公園に行く途中のケーキ屋さん、最近店じまいしちゃったのよ」

「え!?本当に?」

「弘美の好物だったものね、あそこのアップルパイ」

弘美が子どもの頃からあったケーキ屋さんだった。
小学校に入ったお祝いのケーキもそこからのものだった。
中学生、そして高校生になってからも変わらずに、ケーキ屋さんは美味しいケーキを弘美に食べさせてくれた。
そんな大切な思い出がなくなってしまったというのだ。

(わたしが田舎なんかにいるうちに!)

焦った声で母に尋ねる。

「それで、お店は?今はどうなっているの?」

「それが、あっという間に取り壊されて更地になっちゃったのよ。コインパーキングになるみたいよ。お店のおじさんとおばさんも、もう引っ越していないみたいなの」

東京の住宅地では、たまに古い戸建てが取り壊されコインパーキングに化けることはあったが、弘美の中でその存在が当たり前になっていたケーキ屋さんがなくなることは予想もしていなかった。
ショックを受け、目頭が熱くなった。
ショーケースの中に入ったカラフルなケーキ。
奥の厨房からはケーキの甘い香りが漂ってくる。
クリスマスの季節には店内が飾られ繁盛した。
サンタの帽子をかぶったおばさんは忙しくも嬉しそうだった。
それらの思い出がすべて解体され廃棄物となり、跡形もない更地になってしまったというのだ。
弘美は締めつけられるような気持ちになった。
一つ間違えば嗚咽が漏れそうになるのを何とかこらえた。

「弘美は熱を出して寝込んだ時に、あのお店のケーキ食べたら急に治っちゃったことがあったものねぇ」



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