憂うつな春-4
暑さとストレスのため、顔の白い肌は薄く紅潮し、怒っているようにみえた。
(この大学に入ってからロクなことがない)
怒りの矛先は、不本意で入学したこの大学に向けられた。
♡ ♡ ♡ ♡
弘美は教室に入った。
始業前の英語のクラスは賑やかだった。
4月の初々しい雰囲気がまだ少し残っていた。
この大学は田舎に立地しているが、地元のための大学ということではなく全国から学生が集まってくる。
どんな人が来ているのだろうか。
4月当初はお互いを知ろうと興味津々だった。
やがて、それぞれに相手の背景を知ると、当初の興味本位な騒々しさもなんとなく落ちついていった。
そんななかで、4月から今まで一人の男子が一貫して弘美に興味を持ちつづけていた。
今日も弘美が教室に入るなり、すぐに見つけて寄ってきた。
「今日、ほんま暑いよね?昨日、自転車パンクしてしもうて直す時間もないんで、今日は走ってきたんやけど、途中で…」
よくしゃべるこの男子は修二という名前だった。
父親の名前から一文字もらった字が「修」、次男だから「二」、それで修二。
修二がよくしゃべるため自然に覚えてしまったが、名前の由来など別に知りたくもなかった。
というのも、弘美はこのサル顔の男が嫌いだったからだ。
「ヒロミンは来週の木曜って忙しい?バスケ部の練習試合があるねん。見にこれへん?」
ヒロミンというあだ名は修二が勝手に名づけたものであり、承諾した覚えはなかった。
椅子に落ち着いた弘美は気のない返事をした。
「修二、わたし、そんな気分じゃないの。それに、ここのところあまり体調良くないし…」