投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『graduation』
【青春 恋愛小説】

『graduation』の最初へ 『graduation』 35 『graduation』 37 『graduation』の最後へ

『graduation番外編〜彼女が嫌いな彼女〜』-6

そう。雪見先輩は完璧だ。

美人で頭も良くて人当たりも良い。

たまにサークルに顔を出すと、皆に囲まれている。

完璧すぎて、うそ臭い。

姉のように。

だからかもしれない。

あの人も姉と同じ様な汚い人間なんだと、証明したい。

「嫌いなのかも。」

「は?」

「あの人の顔が醜く歪むのを見てみたい。」

隆志は一瞬止まって、お前ってホントSだなと言った。



そして思いがけず直後、あたしたちはその顔を目撃することとなる。

学食から部室へ行こうと階段を上がっている途中だった。

「ありえん。あの教授、2年もゼミにいるのに私の名前忘れてたよ。やつが『妖怪物忘れ』だということを佐伯、100文字以内で証明せよ。」

ワケの分からない内容の話だが、話している人間が誰かは声ですぐに分かる。雪見先輩だ。

部室から階段を下りてきている。

会話からすると横にいるのは佐伯先輩だ。

「あゆみ。」

突然声を掛けられて横を見ると、都築先輩だった。どうやら彼はこれから部室へ向かおうとしているところだった。

「お〜ツヅキ!あゆみに隆志までおそろいかよ。」

佐伯先輩は都築先輩に気付いて手を振った。その拍子に佐伯先輩の手から1枚のプリントが雪見先輩の足元に落ちた。

「あっ。」

その場にいた誰もが息を飲んだ。

ヒールの高い雪見先輩のサンダルが見事にそのプリントを踏む、滑る...

「きゃっ」

短い悲鳴が聞こえて、雪見先輩が階段から転げ落ち......

思わず目を瞑る。

しかし、目を開けると思ったような惨状は起こっていなかった。

代りに目に飛び込んできたのは、都築先輩が3段ぐらい転げ落ちた先輩を抱き止めている姿だった。

都築先輩自身、支えきれなかったのか階段の上で座っている。


『graduation』の最初へ 『graduation』 35 『graduation』 37 『graduation』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前