『graduation番外編〜彼女が嫌いな彼女〜』-12
あたしたちはこうやってもう一生会うこともなく、連絡を取り合うこともなく、終っていくのだ。
そんな人間はこれまでにだって何人もいた。
けどどうしよもなくそれが『嫌』だった。
受け入れられなかった。
...だから、とても小さなことだったけど...自己満足以外のなにものでもなかったけど...あたしは雪見先輩の実家に毎年年賀状を書いた。
まるでストーカーのように毎年、毎年...そして今年で6通目。
返されない、一方通行の、一種のラブレター。
けれども......
※
母が渡してくれた『それ』は、一枚の絵葉書だった。
裏は安芸の宮島の風景をバックに、幸せそうに微笑む若いカップルの写真。
一行だけ添えられた【結婚しました】の文字。
雪見先輩の横にいる人の顔を見て、思わず笑ってしまった。
「陳腐なの〜」
思わず出たのはやっぱりその言葉。
大学時代には在り得ないだろうと思われたカップリング。
世界はあたしとは関係のないところで、確実に回っているらしい。
あまりに可笑しくて、笑いすぎて、涙が出てきた。
写真の雪見先輩にデコピンをしてから呟く。
「あたしにお裾分けしたいくらい幸せなんですか?」
写真の中の雪見先輩は満面の笑顔で微笑んでいた。
(終)