真剣な気持ち-1
美紀は部屋に帰り着くと、着替えるのもそこそこにベッドの端に腰を下ろし、ケータイを取り出した。そして登録してある番号の一つに電話を掛けた。
数回の呼び出し音の後、通話が繋がった。
『もしもし?』
「島袋さんですか? あたしです。美紀」
『えっ?!』島袋は驚いた声を上げた。
通話の後ろでどたどたと誰かが床を走るような音がした。
『美紀さん? ちょ、ちょっと待ってて、こっちから電話する』
そしてすぐに通話が切られた。
数分もしないうちに島袋から電話が掛かってきた。
『どうしたの? 美紀さん、急に。びっくりしたよ』
「ごめんなさい。あたしが電話するの初めてだったからびっくりされたんですね」
『いや、嬉しいです。君から電話がもらえるなんて』
「あの……、貴男に会いたいです」
少し沈んだ声のトーンに気づき、島袋は心配そうに尋ねた。『……何かあったの?』
「お会いした時、お話しします。近いうちに会えますか? こんどの日曜日……とか」
『えっと……日曜日は遊園地に、』そこまで言って島袋は一瞬言葉を飲んだ。そして慌てて続けた。『と、友達にジェットコースター好きのヤツがいてさ、無理矢理誘われちゃって。この歳になって恥ずかしいよね』
島袋はあはは、と笑った。
「お忙しいんですね……」
『時間、作るよ。君の都合は?』
「平日なら夜……かな」
『わかった。じゃあ、こっちから連絡する。メールでいい?』
「わかりました。待ってます」
美紀はそう言って通話を切った。
島袋からは、すぐにケータイにメールがあった。ゆっくり時間はとれないが、話をするだけなら今からでも、という内容だった。美紀は、とにかく今のこの気持ちを島袋に伝えたくて、そのメールに会って下さい、と返信した。