『rule【A面】』-11
「こんな風に始まったものは、長続きしない。誰かを悲しませて始まった報いは、必ず自分にふりかかる......約束は約束。もう終わりにしましょう。」
そう。
わたしはルールに縛られる。
ルールを破れない。
もう、これ以上は。
涙が出そうになるのをぐっとこらえた。ここで泣いたら、終わりにできないから。
「好きだよ。」
泣きそうな声が上から降ってきた。
はじめて敬語ではない言葉がそれなんて...反則だ。
抱きしめられているため、顔は見えない。
ぎゅっと腕に力がこもった。
「知っているわ。」
その言葉に嘘がないことを。
でも...1番ではない、それだけだよね。
......あなたの1番が『彼女』だなんて悔しいから思わない。
けど、あなたの1番はわたしじゃなくて、あなた自身だよね。
わたしもきっとそうなんだよ。
わたしは、わたしを壊してまで、あなたの側にいることを選べない。
だから、離れなければならない......偽善でもなんでもなく、自分を守るために......
すぐにでもこぼれ落ちそうな涙と愛しさをこらえて、わたしは時田の唇に、唇を寄せた。
......これが最後のキスになるだろう。
ゆっくりと、黙って目を閉じた。
カチャリ。
小百合が家の扉を開ける音がする。
頭の中で祖母の声が木霊するように聞こえてきた気がした。
(終)